初期太陽系の証言者−隕石

*隕石の起源
 隕石には、大きく分けて石質隕石(コンドライト、その他)、石鉄隕石、鉄隕石がある。多くの隕石は小惑星の破片であると思われているが、月や火星表面での隕石衝突で飛来したと思われる、それらの天体の特徴を持つ隕石の存在も知られている。

*隕石の種類
 隕石の材質の違いが大きな分類の基準である。大きく分けると石質隕石、鉄隕石、石鉄隕石があるが、それは隕石の母天体(小惑星)の内部で、金属鉄を主とする核と、外側の岩石部分が密度差で分かれた結果、生まれた違いであると考えられる。その形成された深さや条件の違い、あるいは隕石のもとになった小惑星の性格の違いによって、さまざまな種類がある。

*コンドライト
 コンドライトとは、石質隕石の中でも輝石やかんらん石でできた球粒(コンドリュール)を含む隕石のことであり、隕石母天体(小惑星)での変質・変成を様々な程度で受けている。コンドリュールを含まない、結晶質の岩石はエイコンドライトと呼ばれる。
 隕石の中でも、炭素質コンドライトと呼ばれるグループの隕石は、形成年代が古く、初期太陽系の情報を良く保存しているために注目される。
 炭素質コンドライトの化学組成は、分光観測から推定される太陽大気の化学組成と、水素やヘリウムなどのガス成分を除き、きわめて良く一致することが知られており、小惑星形成の際にほとんど化学組成の上で分化していない、太陽系形成時の化学組成を保持した隕石であると考えられている。また、含水鉱物として多くの水を含むなど、揮発成分にとみ、アミノ酸などの有機物も検出されることから、惑星の大気形成や、生命の起源に関わる問題に関して、重要な情報を持っていると考えられている。

*鉄隕石、石鉄隕石
 鉄隕石は、もともとは小惑星の核を構成していたと考えられ、非常に長い時間をかけて金属鉄が冷えたために、鉄の結晶による特有の組織(ウィドマンシュテーテン組織)が観察される。鉄隕石は純粋な鉄ではなく、ニッケルやトロイライト(FeS)などの鉱物を含んでいる。石鉄隕石は、鉄隕石の中にかんらん石が含まれているような構造を示し、小惑星内部での金属鉄の核と石質隕石に代表される岩石部分の境界を示しているものと考えられる。

*隕石の年代
 隕石の放射年代はそのほとんどが44〜45。6億年前に集中し、非常に古い年代を示す。それらは隕石のもとになった小惑星の形成過程を示していると考えられる。隕石のもとになった小惑星は、地球のように大きな惑星を作らずに、太陽系の形成から早い段階で冷えてしまい、その後の火山活動などの影響をほとんど受けていない。そのため、太陽系の初期史を読みとることのできる、地球上で入手できる貴重な情報源となっている。また、消滅核種の痕跡を用いて、太陽系以前の超新星爆発や恒星進化情報を読み解く資料としても重要である。

 −「理科年表ジュニア」第二版、丸善(2003)所収原稿を改変。


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 萩谷 宏 2003.3