4 地殻をつくる主要な造岩鉱物

 地球上ではこれまでにおよそ2000種類の鉱物が発見されているが、特殊な条件で生成される珍しい鉱物が数の上では多く、ほとんどの岩石はわずか数種類の鉱物の組み合わせからなる。このような岩石を構成する主要な鉱物を造岩鉱物と呼ぶ。
 地殻を構成する岩石は、一般に、石英、長石類、雲母類、角閃石類、輝石類、かんらん石類といった珪酸塩鉱物が造岩鉱物として重要である。岩石をつくるこれらの造岩鉱物の種類と比率は、ある程度化学組成を反映することから、岩石の組織とともに岩石分類の基準として用いられる。

*珪酸塩鉱物
 珪酸塩鉱物とは、様々なかたちのSiO44-のネットワークを基本とした結晶構造をもつ鉱物のことである。ほとんどのマグマは急冷すると火山ガラスになるように、珪酸塩の溶液であると考えてよい。したがって、マグマが冷えてできる火成岩は、珪酸塩鉱物(造岩鉱物)の集合体になる。

*固溶体
 鉱物は特殊な例外を除いて一定の結晶構造をもっているが、その結晶構造の中に入りうる元素は、イオン半径や価数などの性質が似ている元素(イオン)同士ではある程度融通が利く。例えばかんらん石(Mg、Fe)2SiO4は、生成条件によって、Mg2+とFe2+が結晶構造をほとんど変えずに入れ替わることができる。ほとんどの造岩鉱物はこのような固溶体の性質をもつために、複雑な化学組成をもつマグマが冷え固まる時に、わずか数種類の鉱物で火成岩が構成することが可能になっている。

*多形
 鉱物の中には、同じ化学組成を持ちながら、結晶構造が異なるために、全く違った物理的性質を持つ鉱物の組み合わせが存在する。このような鉱物の関係を多形あるいは同質異像と呼んでいる。セキボクとダイヤモンド、紅柱石・藍晶石・珪線石、石英とクリストバル石、コース石などが有名である。

*鉱物の分析
 鉱物の性質は、結晶構造と化学組成が重要であり、これらをきちんと調べることで分類が可能になる。結晶構造を調べるには、その原子の配列によって回折現象を起こす、波長の短い電磁波であるX線が利用される。また、化学組成は電子線やX線を鉱物に当てて得られる蛍光X線を利用して調べることが多い。

*身近に見られる造岩鉱物
 火山灰や軽石の中には、マグマだまりの中で成長したいくつかの造岩鉱物の小さな結晶が見られることがある。火山灰や軽石を砕いて、水で火山ガラスを洗い流すことで、斜長石や輝石類、かんらん石や石英など、造岩鉱物の自形結晶を集めることができる。さまざまな火山の噴出物を使えば、主要な造岩鉱物がそろった標本をつくることができる。

 −「理科年表ジュニア」第二版、丸善(2003)所収原稿を改変。


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 萩谷 宏 2003.3