日本の地質のなりたち

 日本列島をつくる地殻の主要な部分は、およそ5億年前からプレートの沈み込み帯にあって、マグマの供給や、プレートによって遠方から運ばれたり、大陸から流れ込んできた堆積物の付加によって成長してきた領域である。1000−2000万年前に、日本海が形成され、大陸から切り離されて今の日本列島のかたちがつくられた。
 大きく見ると、いくつかに区分して考えることができる。

0)主要な付加体形成以前の構造
 南部北上帯、阿武隈帯、飛騨帯・飛騨外縁帯、黒瀬川帯などに区分されている、シルル紀やデボン紀の地層を含むような地質は、比較的安定な大陸縁辺部の堆積物を主体とする地質であり、付加体の構造が顕著な他地域の古生代・中生代の地質とは性格が異なる。また、これに伴って古い大陸地殻の破片である花崗岩類も見いだされる。

1)付加体の構造
 主に古生代、中生代〜第三紀の地層からなる地域であり、日本列島の主要な骨格をつくっていると言える。プレートの沈み込みに伴う付加プロセスで形成され、チャートや砂岩、泥岩、石灰岩などの堆積岩や海洋地殻起源の岩石からなる地域が帯状に配列している。その一部はプレートの沈み込みで地下深部に持ち込まれて変成岩になり、三波川帯をはじめとする変成帯をつくっている。

2)中生代から新生代の花崗岩類
 帯状構造の中でも、内帯と呼ばれる領家帯や阿武隈帯などには、白亜紀から古第三紀にかけて地下で形成され、周囲の地層に貫入した花こう岩類が広く露出している。花崗岩の形成のタイミングがある幅を持った時代に集中していることから、海嶺沈み込みなど、何らかの地質学的な事件を反映していると考えられる。

3)日本海形成期の地層や岩石
 グリーンタフと呼ばれる凝灰岩類を特徴とする、新第三紀の堆積物が厚くつもっている地域。東北日本の日本海側を中心に、広い範囲を覆っている。この地域には特徴的に珪藻質頁岩などの珪質堆積物がみられ、石油鉱床が発達するところもある。また海底熱水鉱床起源と考えられる、黒鉱鉱床も各地に存在し、採掘の対称となった。

4)第四紀火山噴出物
 現在の火山フロントに沿って配列する第四紀火山の噴出物が地表を覆っている地域。日本列島と北海道、東北脊梁山脈や伊豆・小笠原弧、九州から南西諸島に沿って、分布している。

5)海岸平野
 関東平野や大阪平野をはじめとして、第四紀の堆積物が厚く低地を埋めて形成された海岸平野が各所に発達している。第三紀末からの山地の隆起による砕屑物の供給と、構造的な沈降、第四紀の海面変動がこのような平野の発達をもたらした。

*付加体とはどんなものか
 プレートの沈み込むところに、堆積物や海洋底の岩石が集められ、沈み込めずに陸側に付け加わっていくところ。例えば、エスカレーターの終点で、運ばれてきた紙くずがころころ回っているような、そういう場所を想像してもらうと良い。エスカレーターの鉄板は次々と運ばれ、地下に潜っていくが、紙くずは潜り込めずにたまっていく。それが付加体である。付加体の地質を調べることは、ちょうどエスカレーターの終点の紙くずを調べるようなもので、紙くずを調べてみると、前日のバーゲンのレシートだったりするわけだが、同様に付加体に挟み込まれた海洋の岩石の性質を調べたり、化石生物の記録を読みとったりすることができる。

 −「理科年表ジュニア」第二版、丸善(2003)所収原稿を改変。


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 萩谷 宏 2003.3