「NHKジュニアスペシャル」1999年度

 2000.8.13 更新    #28-#40 「地球環境」編 記録と紹介


 9月5日より、毎週火曜・水曜深夜2:00-3:00、NHK教育(ETV深夜館)で再放送予定

 (0時を回っているので正確には翌日の日付になります。録画の際にはご注意ください。)

 地球博士:濱田 隆士さん(放送大学教授・福井県立恐竜博物館長)、さくら:上原さくらさん、ポキート(声):松井菜桜子さん。


#40「地球と生命の関わり」(3/4、11放送)   VTR台本

 VTR1で、太陽からの光や熱が、地球の生命や、水、大気の動きのシステムのエネルギー源であることをおさらいします。

 今回は、化石燃料のできかたを学びながら、これまでの内容をふまえて人間と自然との関わりを見直し、 循環型社会の必要性を考えます。

 VTR2では、石油及び石炭のできかたを映像と図を使って解説します。陸上植物の出現に見るような、生命や生態系の進化と、 大陸移動に現れる地球のダイナミックな動きとが、これらの化石燃料をつくる上で重要であったことを学びます。

 最終回ということで、地球博士のメッセージや、さくら&ポキートの2年間の学習を通しての感想も最後に述べられます。

#39「島 〜小さな地球」(2/19、26放送)   VTR台本

 周囲を海によって隔てられた島の陸上生態系は、隔離の効果による進化の実験室として、興味深く貴重な存在です。 かつてダーウィンはビーグル号でガラパゴス諸島を訪れ、その生物の観察を彼の進化論を組み立てる上での材料にしました。

 島の生態系は、限られた資源をいかにうまく使い、環境に適応するかという生きものたちの戦略がよくわかります。 それは有限の地球に住まう人類にとっても、何らかの価値を見いだせるものかもしれません。

 番組ではVTR1でガラパゴス諸島の生物たちを、VTR2で南西諸島の生物たちを紹介します。

#38「縄文 〜文明を支えた穏やかな気候」(2/5、12放送)   VTR台本

 最終氷期の終了、そしてヤンガードライアス期の寒冷化を経て、約1万年前頃から急速に地球表層は温暖化が進行しました。 われわれ人類の発展は、約1万年前を境とする気候変動−氷期からこの温暖な間氷期への移行−に秘密があると考えられます。

 寒冷な氷期には、海水が蒸発して雪として降ったものが、巨大な氷床をつくって陸上にたまり、そのため海の水位が低下しました。 氷期を通じて海面は現在よりも低く、約19000年前の最盛期には、現在よりも約130mも低くなったと考えられています。

 このため、現在海面下にある、大陸棚とよばれる浅い海のかなりの部分が露出し、人類や動物の行き来を可能にしていました。 日本列島は中国や朝鮮半島と陸続きになり、さまざまな動物が渡ってきました。化石として発見されるナウマン象やマンモス、 オオツノシカなどの他、洞穴堆積物からはトラやライオンの仲間も発見されています。

 ユーラシアと北米をつなぐベーリング海も陸化しました。アフリカに起源を持つと言われる人類は、 氷期を通じて各地に広がっていきましたが、約1万2000年前にはベーリング海地域を踏み越え、わずかな人数が北米の2つの氷床のすき間を通って、 その後数を増やし、南北アメリカ大陸に急速に広がっていきました。

 それと時をほぼ同じくして、北米及び南米に分布していた、大型哺乳類の多数が絶滅したことがわかってきました。その原因には、 気候変動だけではなく、人為的影響があった可能性が指摘されています。

 番組前半で、これらの絶滅動物を紹介し、そこに関わる人間活動の圧力について、スタジオで解説します。

 日本では、氷期の終了と共に遺跡が急激に増加し、さまざまな人類活動の痕跡が読みとれるようになり、 それらは縄文文化と呼ばれています。近年、三内丸山遺跡を初めとする新しい発見が相次ぎ、縄文文化に対するイメージは変化を迫られることになりました。

 番組後半では、三内丸山遺跡での大規模な構築物や集落の存在、高度な技術を要する工芸品、DNA分析から示唆されるクリ栽培の可能性などを紹介します。 また、集落の衰亡と気候変動との関わりについても考察します。

#37「深層海流二千年の大航海」(Nスペ「海」)(1/22、29放送)   VTR台本

 地球は太陽からの熱を受けていますが、その熱の供給は赤道地方と極地方で大きな差があります。 その差を埋めるように、大気の流れや海流、そして水蒸気のもつ潜熱という3つのかたちで、 暖かい赤道地方から冷たい極地方へ熱が運ばれています。

 表層の海流は熱を運ぶ役割の点で、大気の流れと共に重要なはたらきをしています。海沿いの地方が冬は温暖で、夏は涼しいのも、 海流によって運ばれる海水の保温効果のおかげです。

 近年、深さ数千m〜1万mもの深海に、ごくごくゆっくりとした海水の流れがあることがわかってきました。 その流れは、決まった方向を持ち、約2000年で一周する循環をつくっています。 この深層水の循環が気候の安定化に重要な役割を果たしていることがわかってきました。

 過去の気候を知る重要な手がかりが、グリーンランドの氷床を打ち抜いた、ボーリングコア資料から得られています。 そこには氷期の激しい気候変動や、ヤンガードライアス期と呼ばれる約13000年前の寒冷期の記録が閉じこめられていました。

 融解し、縮小する大陸氷床が残した大量の淡水が、密度が低いために北大西洋の深層への沈み込み口を覆い、 そのために深層循環が停止し、北米やヨーロッパでは氷期に逆戻りしたような気候を一時的に経験したと考えられています。

 最終氷期が終わってから、過去約1万年の間、全体として地球は温暖な環境を維持してきました。 深層海流の流れは、安定した気候条件を維持するために、きわめて重要な役割を果たしていたのです。

#36「眠る巨大資源」(Nスペ「海」)(1/8、15放送)   VTR台本

 海水には様々な元素が溶け込んでいます。その中には、陸上ではわずかしかなかったり、産出する場所が限られている元素も含まれます。 膨大な量の海水から、もし特定の元素だけを効率よく取り出すことができれば、資源の枯渇を気にすることもないように思えます。

 海底には、天然の濃集過程によって集められた金属資源が見られるところがあります。#30(資源を産んだマグマ噴出) で紹介した熱水鉱床もそのひとつですが、マンガン団塊(マンガンノジュール)はそれとは違ったタイプの資源です。 深い海底で、数百万年から1000万年の時間をかけて、岩石片や生物遺骸を核にして、ゆっくりと成長したことが放射性同位体の測定で明らかになりました。

 また、近年新たな燃料資源として脚光を浴びているのが、メタンガスハイドレートという物質です。水分子の中にメタン(CH4、都市ガスの主成分でもある) の分子が取り込められたかたちの、特殊な氷です。1立方メートルのこの氷の中に、200立方メートルものメタンのガスが閉じこめられています。

 番組では、この他に海の生物が持っている化学物質を研究し、医療に役立てようとする試みなども紹介します。また、 スタジオにガスハイドレートを持ち込んで火をつけます。冷たい氷が燃える様子は必見!

#35「クジラだけが知っている」(「海」)(12/11、18、25放送)   VTR台本 ヒゲクジラ下顎標本…番組で使用したもの。国立科博標本。

 クジラ類は海での生活に高度に適応した身体のつくりをもつ,哺乳類の仲間です。 その生態には,まだまだわかっていないことがたくさんあります。

 クジラ類の生態を貴重な映像で紹介するとともに,遊泳能力を発達させ,効率的にえさをとる能力を獲得した,クジラの身体の特徴や, 音を使ったり,長時間潜水したりできる,彼らのその特殊な能力を紹介します。

 また、スタジオでは,クジラと人との関わりの歴史を振り返り,我々と自然との関わりを考えます。

#34「めぐる生命の輪」(「海」)(11/27、12/4放送)   VTR台本

 プランクトン  ヒトデ化石(ブンデンバッハ)

 深海・半深海の生物については、まだまだ未知の部分が多く、潜水艇によるその場の観察で、 近年ようやくその一部がわかってきたというのが実状です。

 深い海の生き物と、表層の生物とは無関係ではなく、実は生態系の食物連鎖を通したリンなどの物質循環のサイクルのなかで、 密接につながりを持っています。

 また、物質循環の上では、海の生物は陸上の生物とも無関係ではありません。

 番組では、不思議な深海の生物を導入にして、海の生態系や、食物連鎖と物質の動きをやさしく解説します。

#33「河川…大地をめぐる水」(11/13、11/20放送)

 ヨーロッパの水を蒸発させた沈殿物

 我々にとってもっとも身近な物質、水。蒸発と凝結、降水というプロセスを経て、地上にもたらされる水ですが、 雨や雪として降った水がまた海に戻るまでに、様々な現象を見ることができます。その水の旅を、河川を例に取り上げます。

 VTR1はアマゾンを例に、水の循環と、水がミネラルを溶かし込んで、そ れが生命を育むという話、VTR2は黄河を例にして、河川のもう一つの重要 な働き、侵食と運搬、堆積の作用を扱っています。

 スタジオでは、各種のミネラルウォーターから水を蒸発させて残った沈殿物を比較したり、 水の不思議な性質や自然界での役割を考えます。

#32「移動する大砂漠」(10/30、11/6放送)

 スタジオで使った砂の標本(顕微鏡写真)

 砂漠には厳密な定義はありませんが、非常に乾燥したところを指します。単に降水量が少ないと言うだけでなく、 蒸発量とのかねあいで決まるので、実は地球上の様々な場所に砂漠が発達し、その面積は陸上の1/4を占めます。

 砂漠の発達するところには、次のような条件があります。
 1)内陸であること
 2)山脈の風下側
 3)中緯度(亜熱帯)高圧帯
 4)寒流の沿岸

 例えばサハラ砂漠は3)と1)、アタカマ砂漠は1)、2)、3)があてはまり、タクラマカン砂漠では、 1)と2)の条件が当てはまります。

 砂漠には様々な顔があります。風に運ばれる砂がつくる不思議な風景を紹介します。

 砂漠は砂丘が連なるような、砂に覆われたところばかりとは限りません。岩石(レキ)の砂漠や、サボテンの生えた砂漠など、 様々な風景があります。むしろ、砂だけに覆われたところは少ないのです。

 砂漠は地球の極限環境のひとつですが、そこにもたくましく生きる生命があります。乾燥・高温に適応した爬虫類や昆虫、 数年に一度の大雨の後などに一斉に芽を出し、花を付ける植物や、内部に水を蓄えたサボテンなど、 適応の姿も様々です。

 砂をつくるのは、太陽の熱による岩石の風化、そして風の働きの積み重ねです。また、そこに地球の大きな大気の循環が深く関わっています。 砂漠の風景から地球の熱輸送の仕組みを学び、砂漠の星にはならない地球の不思議、土の役割、 そして森林が支える陸上生態系を考えます。

#31「巨木の森、大地を覆う」(10/16、23放送)

 北米・カリフォルニアの森には、112mの高さを持つ、世界一高いセンペルセコイアの木がありました。 元番組(地球大紀行)の放送後、この木は風害で折れてしまい、現在は別の木が世界一の高さとなっていますが、 30階建てのビルに相当するこの高さは、想像を絶するものがあります。この巨木の森を入り口に、 地球が緑の惑星になるまでの道筋をたどり、陸上という新たな環境に適応するために、 どのようなしくみを植物が発達させてきたのか、化石と現生植物を使って説明します。

 我々の祖先にあたる、脊椎動物の祖先が陸上に進出することができたのも、直接間接に植物の上陸と森林生態系の形成が関わっています。 森林は、光合成・炭酸同化によって有機物を生産し、それを消費する動物の世界を支えます。 また、光合成の副産物として酸素を放出し、 それがオゾン層を維持して紫外線を防ぐとともに、水中よりも効率の良い空気中の酸素呼吸を可能にしました。 酸素の多い大気がなければ、例えば人類のような大量に酸素を消費する生物の進化は不可能だったでしょう。 現在の生態系や地球環境を支えているのも、陸上植物の活動であるといえるのです。

 番組では、植物の進化史をVTRでおさらいし、スタジオで針葉樹やマツバランなどの標本も使いながら解説するとともに、 地球環境をマイルドに維持する森林の役割について解説します。

#30「資源を産んだマグマ噴出」(10/2、9放送)

 番組では、アンデスやキプロスの銅鉱床を取り上げ、そこでの銅の濃集のしくみを解説しながら、 マグマと水のはたらきによる、地球ならではの濃集のしくみを紹介します。また、金属資源だけではなく、 我々に身近な宝石のできかたも、同じような濃集のしくみの産物として説明します。

 惑星探査が進み、21世紀は確実に宇宙開発の時代になるものと予想されますが、まだまだ当分の間は、 ほとんどの資源を地球上のものに頼るしかないでしょう。

 我々が使っている様々な鉱物資源は、地球ならではの、特殊な濃集のシステムでつくられたものです。 それは地球内部の熱を表面に輸送する過程としてのマグマのはたらき、 そして表層での水の循環と物質移動のしくみに秘密があります。

 現在、活発な火山活動を続けているのは、太陽系の惑星では地球だけです。

 さらに、地表で太陽放射のエネルギーを使っての、大気や水による風化・浸食・堆積といった作用がはたらくことで、 より高濃度に物質を選り分け、集めてできた鉱床もあります。

 水や大気が効率的に地表を改変しているのも、地球ならではの姿です。

 さらに、生物の作用もあります。縞状鉄鉱や、化石燃料である石炭、石油資源にも触れます。

 資源利用の際に起こる様々な問題についても言及します。ここでは個別の解決法を紹介するわけではありませんが、 この番組では、まず、そういう問題があることを意識してもらえれば、と思います。

#29「地震」(9/18、25放送)

 地球内部の熱が、地球表面のプレートを動かす原動力になっています。そして、そのプレートの動きが、 直接間接に、地震の発生を引き起こしています。

 表面に近くて冷えて固い岩石の領域に、プレートの動きに起因する大きな力が加わり続けると、あるところで岩石がそのひずみに耐えきれなくなり、 断層をつくって岩石の破断が起きます。この破壊のエネルギーが震動となって伝わるのです。

 プレートの動きや、地殻表面の変形は、近年の技術の発達により、GPS測量などの手法でリアルタイムに観測することができるようになりました。

 このような大地の動き、特にプレートの沈み込みは、我々の住む陸地をつくってきた動きなのです。

 日本列島の地殻は、およそ5億年前から、ユーラシア大陸の東縁に太平洋側のプレートが沈み込み続けてつくられました。 沈み込むプレートと共に運ばれてきた、海側のプレートの上にのった地層や岩石、火山島やサンゴ礁の破片などが、 大陸側から供給された土砂の中に挟み込まれて、海溝の陸側におしつけられ固まった、「付加体」という構造ができます。

 日本列島は、この「付加体」の構造が基本になっています。その帯状の地層のならびは、特に西南日本で明瞭に見られます。 また、プレートの沈み込みに伴って、マグマが上昇して地殻につけ加わり、冷え固まってその体積を増やしていきました。 日本各地に見られるかこう岩(みかげ石の石材として用いられる)は、そのほとんどが、およそ1.2億年前〜6000万年前のマグマ活動の産物です。

 このようにして成長した大陸の東縁部分が、2000-1000万年前に、ちょうどいま東アフリカで起きつつあるような、 大陸地殻の分裂が起こり、日本海ができて、島弧(列島)として大陸から分離しました。こうして日本列島の主要な部分がつくられたのです。 このときの火山活動の地層は、特に東北日本に広く分布しています。

 地震は我々にとって大きな災害をもたらすものです。しかし、地球が”生きて”いて、表面がゆっくりと、 大規模に動いてきたからこそ、我々の住む大地がつくられたのです。
 プレートの沈み込む場所に位置する日本は、世界有数の地震国ですが、 その大地の変動の積み重ねが、多様な景観や豊かな自然環境をもたらしているのです。

 地震に対しても、われわれが正しい知識を持ち、よりうまく対応することが求められているといえそうです。

#28「火山」   VTR台本(杉山さん作成)

 地球は内部にいくほど高温になっています。表面の平均温度は摂氏15度ですが、地殻の深い部分では600度くらい、 深さ30km〜150kmのプレートの下側で1100度、深さ2900kmのマントルと核の境界で3500度〜4000度、 そして深さ6400kmの地球中心では6000度にも達すると推定されています。

 その熱の源は、地球がつくられたときの微惑星の衝突や、金属鉄の核が形成されたときに放出された、地球初期の熱エネルギーの余熱と、 地球史46億年を通じて蓄えられてきた、マントルや地殻の放射性物質の発生する熱の、大きく分けて2つがあります。

 地球上には火山があり、真っ赤な溶岩を噴出したり、高温のガスを噴き上げたりします。それは、地球内部の熱を宇宙空間に逃がし、 地球を冷やそうとする、今も続く地球の放熱の営みです。

 地球内部はそのように高温であるとすると、どこでも地下にはどろどろに岩石が融けたマグマがありそうなものですが、 しかし、地震波の伝わり方などからわかっている実際の地球内部の様子は、そうではありません。 岩石でできた地殻とマントルのほとんどすべては固体なのです。

 火山ができるところも、地球上の特定の場所に限られます。それは、地球の表面がいくつかのブロックに分かれて動いているという、 プレート・テクトニクスのしくみと、深いつながりがあります。

 地球の火山ができるところは、

1)プレートが生まれるところ=海嶺、リフト帯(アイスランド、太平洋東部、アフリカ大地溝帯など)
2)プレートが沈み込むところ=海溝沿い(日本やアンデス、アリューシャン列島など)
3)ホットスポット(ハワイなど)

 というところです。

 それぞれ、どういうしくみでマグマが発生するのか、そして、火山は我々に何をもたらしているのか、 番組では火山と人間生活の関わりも考えていきます。

   「宇宙」編の解説など


*参考図書類 99年度「地球環境」編 (途中)

英文


教科書・参考書類


NHKジュニアスペシャル98 昨年度の記録、補足情報など。

ジュニアスペシャル99 1学期


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