地球上に水はどのくらいある

 太陽系の惑星の中で、地球が他の惑星と大きく違うところが2つあります。ひとつは表面の大半を水が覆っていること。もうひとつは大気の組成が窒素・酸素を主体とすることです。

 天気予報番組などで、衛星からの地球の雲写真を見ると、海の占める面積がとても大きいことに気づきます。地球は表面の約7割を海が覆っていて、その海の平均水深は約4000mもあります。もし、陸地の岩石をすべて削って海の底に流し込んで、完全に平らな地球をつくったとすると、地球は平均3000m近い水深の、水で覆われた惑星になってしまうわけです。まさに地球は水惑星です。その海水の量は、1兆トンの140万倍もあります。

 地球上の水は、海水だけでなく、いろいろなかたちで私たちの身の回りに存在しています。太陽からの光と熱で、地球上いたるところで水は蒸発して、大気の中に水蒸気として取り込まれます。洗濯物を外に干しておくと、いつのまにか乾いていますね。水が水蒸気として空気の中に取り込まれていくのです。

 海では年間で平均1m水位が下がるだけの水が蒸発している計算になります。水蒸気のかたちで大気に取り込まれた水は、ふたたび液体の水や、固体の氷としてあらわれ、雨や雪として地表に降ってきます。蒸発したのと同じだけの水が、大気から地表に戻ってきているわけです。大気中にふだん含まれている水は、そのうちのわずか3cm分以下であるようです。ということは、蒸発して大気にとけ込んだ水蒸気は、平均10日くらいで雨や雪として地表に戻ってきてしまうわけですね。とても入れ替わりが激しいわけです。雲写真を注意して見ると、1日ごとに雲が生まれ、消えていく様子がわかります。大気中の水蒸気の激しい入れ替わりがよくわかりますね。

 雨や雪として降ってくる水は、塩分をほとんど含まない水です。海水から蒸発するときに、塩分は蒸発せずに海水に残ります。ですから蒸発が激しく河川の少ない亜熱帯の海は、海水が他より少しだけ塩辛いのです。陸上に降った水は、地表の土壌や岩石からいろいろな成分をわずかずつとけ込ませながら、また海に戻ります。海の水は全体として減ることはないわけです。

 そうしてみると、地球上では淡水が非常に少ないこともわかります。1年間に蒸発と降水によって生産される真水は、海水の1/4000以下にしかならないわけですから。しかも、陸上に降るものはその一部ですし、陸上に降ってきた水は河川や地下水のかたちで海に戻り、また陸上で蒸発して水蒸気になるものもあります。われわれが水資源として利用できる水は、実はとても限られたものなのです。

 我々の生活している地面の下の、地殻やマントルの岩石にも水は含まれています。角閃石や雲母などの鉱物に含まれるかたちで、地殻全体では重量で1%ほどの水が含まれている計算になります。マントルの場合はこれより少なくなりますが、平均で数10ppm (0.001〜0.01%)程度の水が含まれていると考えられます。

 マグマの中にも水はたくさんとけ込んでいます。火山の噴火で爆発が起きるのは、マグマの中に含まれているガスの成分が原因ですが、このガス成分の大半は水蒸気なのです。

 しかし、これらの岩石中の水をすべて合わせても、海水に比べてかなり少ない量にしかなりません。地球の水は表面に集中していて、それが生命活動を支えているのです。(萩谷 宏)

 −「水と空気の100不思議」左巻健男編、東京書籍(1997)所収・一部加筆−


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