水がある惑星は地球だけ?

 地球の表面には大量の水があって、表面を覆っているわけですが、では、太陽系の他の惑星には水はないのでしょうか。

 太陽系の惑星は、およそ46億年前に星間ガスが集まって太陽がつくられるときに、ほぼ同じ材料からつくられたと考えられています。水星から火星までの地球型惑星の場合、微惑星どうしが衝突して合体成長し、その際に熱が生じ、ガス成分が放出されます。それが惑星を覆う大気となったわけです。この大気の温室効果で、惑星表面はどろどろの溶岩が覆った、マグマ・オーシャンと呼ばれる状態がつくられたと考えられます。地球型惑星の初期大気はそのマグマと反応するために、二酸化炭素・水蒸気・窒素のような、比較的酸化的な成分が主体になると考えられています。すると、地球型惑星ができたときには、すでにかなりの量の水が惑星表面にあることになります。

 しかし、その後の惑星の姿は異なる歴史をたどりました。現在、地球型惑星のなかで表面に液体の水が見られるのは、地球だけです。液体の水が海として安定して表面に存在できるためには、太陽からの距離と、惑星のサイズの2つの条件をちょうどよく満たさなくてはいけないのです。

金星のように太陽との距離が小さいと、表面が高温になるため、水は液体ではなく気体の水蒸気として大気に入ります。水蒸気は温室効果の大きい気体ですので、表面が高温に保たれてしまい、いつまでたっても海ができません。その状態が続くと、水は太陽の紫外線で分解されて、どんどん減ってしまうのです。分解の結果、水素と酸素ができますが、水素は軽い気体なので宇宙空間にどんどん逃げてしまい、酸素は大気中の硫黄や地表の岩石の酸化に消費されました。こうして、金星表面の水は非常に少なくなってしまいました。

地球のように、水蒸気ではなく大部分の水が液体のかたちで表面(海洋)にあることは、この光分解による水の消費を押さえることに役立ちます。地球表面の水は、基本的には地球史を通じて減少傾向にあると考えられますが、それでも大部分が保持されています。そのために、金星のような、暴走温室効果と呼ばれる高温状態にならずにすんでいるのです。

 火星のように惑星のサイズが小さいと、表面の重力で大気や水をつなぎ止めておくことができず、これらは宇宙空間に逃げていってしまいます。このため現在の火星の大気は希薄です。しかし、過去には液体の水が表面にあったのかも知れません。

 火星の極には、白く輝いて見える、極冠と呼ばれる部分があります。よく観察すると、極冠は大きさが季節によって変化していることがわかります。探査機による観測などから、これは主にドライアイスと氷からなる部分であることがわかりました。火星にはわずかですが水があるのです。火星の表面には、かつて水が流れたと考えられるような、谷の地形が見られるところがあります。また、火星の大気や土壌の分析結果からも、たくさんの水があったと思われます。現在の火星では、水は表面の岩石の下に、氷のかたちで、永久凍土として閉じこめられている可能性が考えられています。

 表面に液体の水があったのなら、生命が誕生していてもおかしくない、と考えるのは自然なことです。最近、アメリカ航空宇宙局(NASA)が、火星から来た隕石の中に、生命の痕跡を発見した、という発表をしました。それが本当に化石かどうかは議論が分かれていますが、これを契機にあらたな火星探査計画がスタートしつつあります。バイキング計画で一度は否定された火星の生命が果たして見つかることになるのか、楽しみですね。(萩谷 宏)               

−「水と空気の100不思議」左巻健男編、東京書籍1997所収・一部加筆−

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氷河の融けた水

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