プリュームテクトニクスの概説


 プレートテクトニクスは、固体地球表層の、様々な地球科学的現象を統一的に説明するものとして、 広く受け入れられている。地球表層の大規模な現象を、 (地向斜のような)垂直方向ではなく、水平方向での運動を重視することで、非常によく説明できるようになった。近年はVLBIやGPSなどの手法で、プレートの移動が年単位で実測されている。

 しかし、詳しく見るとプレート移動の駆動力や沈み込んだプレートの行方、 あるいは大陸分裂や新しいプレート生成の機構などに、未解決の問題がいくつも残されていた。

 近年、地震波トモグラフィーという手法で、マントル全体の地震波速度分布を3次元的にとらえることが 可能になり、その成果と高温高圧実験の蓄積などから、プリューム・テクトニクスという考え方が広く認められるようになった。
 トモグラフィーとは断層写真法のことで、マントル内部の高温部分では地震波速度が遅く、低温部では速いという性質を利用して、人体のCTスキャンと同様に、地震波速度分布の3次元的な姿から地球内部を読みとる。
 この方法で、海溝から沈み込んだプレートが上部・下部 マントル境界にいったんとどまり、ある程度たまるとコールドプリューム となって下部マントルの中を落ちていく様子や、場所によってはその境界を突き抜けている様子も読みとれた。それは逆に核と マントルの境界からホットプリュームの上昇を引き起こすと考えられ、実際に南太平洋 や東アフリカの下に低速度(高温)の領域が認められる。

 このようなプリュームテクトニクスの発展により、固体地球進化史などに新たな視点が開かれつつある。

(萩谷 宏:niftyserve fkyoikus mes5【理科の部屋】 #22303(1997/6/16)より。一部改変。)

 *「科学」97年7月号に、プリュームテクトニクスの特集があります。(一般向けにはやや難解ですが)


読み物

index