NHKジュニアスペシャル 第3回「残されていた原始の海」 補足


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【大気中の酸素の存在】

 要点は、地球の大気は表面を覆う、きわめて薄い部分に過ぎないが、非常に重要な部分でもある。 地球だけになぜ酸素があるのか。

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 地球史の前半、真核細胞の出現までの15〜20億年もの間、酸素を生み出し、地球表層を酸化してきた主役は、 現在も生きているこの小さな藍藻(シアノバクテリア)の仲間なのです。

【エアーズロック】

 世界でいちばん大きい岩というと、ギアナ高地のロライマ山などはどうなんだろうということにもなります。 しかし、ここで注目して欲しいのは大きさではなく、表面が赤く染まっていることです。 これは岩石中の鉄分が酸化して、酸化鉄の色がついているのです。これはまさに、 現在の大気に酸素が多量に含まれていて、地表の岩石の鉄分が酸化されることを表しています。
 22億年前よりも昔は、このように岩石の表面が風化して赤く染まることはなかっただろうと考えられます。 大気中に酸素が充分に含まれて、地表の鉄分を酸化できるようになったのは、地球史の後半になってからなのです。

【ストロマトライト】

 ストロマトライトは、岩石の構造につけられた名前です。藻類(バクテリア)のマットが積み重なってできる構造です。 断面ではドーム状あるいは半円形、棒状などのかたちに見えます。

 ストロマトライトは、約35億年前以降、様々な時代の地層から見つかっています。これは、生物そのものの化石ではありませんが、 生物がつくった構造という意味では、化石の一種(生痕化石)と呼べます。石材にも、中国産のコレニア石灰岩として見ることがあります。

【35億年前の化石】

 この中では1976年の発見としていますが、この報告のもとになった化石の産出地点が再確認できませんでした。 約35億年前の微化石が1984年に再発見されました。それは「地球大紀行」のロケの際に同時に行った調査で発見されたのです。 このとき、エイペックス・チャートと呼ばれる地層から、シアノバクテリアなど数種類の微化石が発見されました。

【光合成】

 35億年前に、酸素を発生するような光合成があったかどうかについては、まだ議論のあるところです。 ショップ博士らは、35億年前の微化石が、形態と炭素同位体の特徴から、酸素放出型の光合成をする シアノバクテリアなど、数種類のバクテリアであると主張しています。酸素放出型の光合成は かなり複雑なメカニズムを必要とするので、このように非常に早い時期から現生種に似た シアノバクテリアが繁栄したと考えることに疑問を持つ研究者もいます。

 ここでは、縞状鉄鉱の存在などの間接証拠や、炭素同位体のデータを重く見て、 ショップの説に従って説明しています。しかし、画面で紹介するストロマトライト構造が 生物源であるといえるか若干問題があり、ぼかした表現になりました。
 エイペックス・チャートのバクテリア・マットの構造などは、微化石を伴うことなど、 ストロマトライトと呼ぶことに問題はないのですが、化石が残っていない場合には、 熱水性堆積物の可能性もあり、認定には非常に慎重にならなくてはいけません。

【化石の認定】

 微化石が、本当に生命起源のものであるか、判断するのは簡単ではありません。あとから混入したゴミや、 流体包有物という岩石の中の泡である可能性もあるわけです。  判断基準のひとつは炭素の同位体比です。生物が炭酸同化で炭素を取り出すときに、炭素の安定同位体である炭素12と13のうち、 選択的に炭素12を多く取り込みます。もし、炭素の同位体が12Cが多い方に大きく偏っていれば、 それが生物源の炭素であるという決め手になります。

【酸素の生産】

 酸素を出す生き物がいつ出現し、どのような生活をしていたのか、まだわかっていないことがたくさんあります。 しかし、先カンブリア代前半の地層には、38億年前のイスアの地層を始めとして、40億年前のアカスタ片麻岩(カナダ)にはさまれる地層も含め、 頻繁に縞状鉄鉱がみられます。このことは、生物による酸素の生産が、かなり早い時期から始まっていたという状況証拠です。

 シアノバクテリアは、バクテリアの中でも比較的進歩したグループに属しますので、それ以前に生命の誕生があり、進化が進んでいたと考えられます。

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【鉄鉱石】

【海水中の鉄】

【酸素と地球環境】

*参考文献

98/11/4 萩谷 宏


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