初期大気の窒素
地球形成時の初期大気の見積もりは、どうしてもある程度の不確かさがあるのですが、 現在の、海洋など表面付近の水の量、地殻中の石灰岩や有機炭素の存在量をもとに計算すると、 水蒸気が300気圧分、二酸化炭素が40-100気圧分くらいになります。 窒素は多めに見積もっても2-3気圧分くらいにしかなりません。
このうち、水蒸気は海洋を形成することで、大気からそのほとんどが除かれます。
海洋が形成されることで、二酸化炭素がカルシウムなどの陽イオンと結びつき、 石灰岩として固定され、急速に大気から除去されます。おそらく、 生命が誕生した頃には数気圧以下にまで低下していたものと考えられています。
一方、長期間にわたる生物の光合成活動により、原生代以降に大気に酸素が蓄積されて、 4億年くらい前には、現在とほぼ同じくらいの酸素濃度が実現されていたと考えられています。
窒素は岩石中にも海洋中にも、取り込まれずに残ります。つまり、どこにも行き場がなく、
地球史を通して大気中にずっと同じくらいあったのではないかと考えられます。
生物の利用もありますが、土壌などに含まれる窒素量は、大気圧でわかるように、
地表1平方mあたり8トンの大気中の存在量に比べて、ごくわずかにしかなりません。
現在の火星や金星の大気と比較すると、それらの大気は二酸化炭素を主としていますが、 ごくわずか(1-2%)に窒素が含まれていることがわかります。 地球の大気は、海洋の作用により、二酸化炭素を除去することで、窒素が主成分の大気になったのです。