気象のふしぎ1

 萩谷 宏 科学デジタル質問箱用解説 2000.8.28

どうして風が吹くのか

 太陽の光は、大気を通って地面や海面を暖めます。暖められた地表は、その上にある空気を暖めます。すると、暖まった空気は軽くなり、上昇します。空気が上昇すると、そのすきまを埋めるためにまわりの空気が流れ込んできます。その空気の流れが風なのです。

 水槽の中で一方から空気を暖める実験をしました。線香のけむりで空気の流れを追ってみると、暖められた空気は上昇し、反対側では冷やされた空気が下に降りてきます。そして、上昇と下降の間では水平に空気が動いています。このように、温度の違いが空気の動きをうみだすのです。

 地球全体でみると、赤道付近で太陽からの熱を最も多く受けます。そこで、赤道付近で上昇流が生じ、それが地球全体にわたる大規模な空気の流れを作り出しています。

 風は太陽の熱を運びます。風によって降り注ぐ太陽の熱は、地球の隅々まで運ばれているのです。

雲のできかた

 山にかかる霧は、ふもとから見ると雲に見えます。雲と霧は、じつは同じものです。どちらもごく小さな水や氷の粒でできています。

 雲がわき出るところでは、必ず上昇気流があります。雲はどうやってできるのか、空気と水蒸気の入ったフラスコで、上昇気流の中と同じ状態を作って実験してみました。

 フラスコに栓をして、シリンダーをつなぎ、ピストンをひくと、霧で中が曇ります。

 これは、フラスコの中の空気の温度が下がり、水蒸気が水の粒になって現れているのです。ちょうど、冷えたコップのまわりの空気が冷やされて、コップに水滴がつくのと同じ原理です。

 地面付近の空気が暖められたり、風が山にぶつかったりすることで、空気は上昇します。その上昇気流の中では、空気の中にあった水蒸気が水や氷の粒となって現れます。雲をつくる粒はたいへん小さいので、空気に乗ってただよい、日光を反射して白く輝きます。それが雲の正体なのです。

雨の降り方

 雨は雲の中で作られます。

 雲をつくる水の粒が、上向きの空気の流れにのって上昇します。昇るにつれて温度が下がり、水は氷になり、小さな雪の結晶ができます。さらに上昇すると、周囲の温度が下がり、まわりの水分をとりこんで、結晶は大きな氷に成長します。

 氷が大きくなると、上向きの空気の流れでは支えることができず、氷の粒は落下をはじめます。気温は地面に近づくほど高くなるので、ある高さで氷の粒はとけはじめ、水の粒になります。そうして地上に落ちてくるのが雨なのです。

 もし、地上の気温が低ければ、氷の粒はとけずにそのまま雪として降ってきます。雨も雪も、雲から落ち始めるところまでは同じものなのです。

虹の秘密

 太陽の光には、さまざまな色の光が含まれています。

 プリズムをつかって、光の成分を調べることができます。細い白色の光をプリズムに通すと、光が虹のような色の帯に分かれます。

 光がプリズムを通るときには、プリズムの表面で光が折れ曲がりながら進みますが、このとき、光の種類(色)によって、折れ曲がり方がちがいます。そのため、いくつもの色に分かれるのです。

 虹の場合は、空中にある小さな雨粒がプリズムの役割をします。太陽の光が雨粒に入ると、ちょうどプリズムと同じように折れ曲がったり、反射したりします。そのときに、太陽の光が虹の帯に分かれるのです。

 虹のどの色が見えるかは、光がやってくる方向と、見る人の位置によって決まります。虹は太陽の反対側の方向に見えます。ふつうの虹では、大きく曲げられる紫の光が内側に、小さく曲げられる赤い光が外側に見えます。

オーロラ

 オーロラは、南極や北極周辺の夜空に輝く光の帯です。オーロラを生み出すのは、太陽から飛んでくる、電気を帯びた目に見えない粒子です。

 太陽をつくるガスの一部は、電気をおびた粒子となって、周囲の宇宙空間に猛スピードで吹きだしています。地球にも、その粒子はたくさんやってきます。けれども、地球にその粒子が直接当たることはほとんどありません。

 地球は大きな磁石の性質を持っています。南極と北極を結んで、磁石の強い力が地球を包んでいます。そのため、太陽から来た粒子は磁石の力で食いとめられてしまうのです。

 ところが、太陽から来た粒子の一部は、地球の影の方向から戻ってきて、北極と南極に降りそそぎます。そして、高度100kmくらいで地球の大気にぶつかり、光を放つのです。これがオーロラの正体です。

どうして季節があるのか

 季節ができるのは、地球が傾いたかたちで、太陽のまわりを回っていることに原因があります。

 地球は毎日1回転ずつ回転し、昼と夜が交互にやってきます。その回転の軸は、地球が1年をかけて太陽のまわりを回る軌道とは、およそ23.4度傾いています。

 夏の位置では、昼に太陽側に地球が傾いています。日本には垂直に近い角度で太陽からの光が当たります。一方、冬の位置では、昼には太陽と反対側に地球が傾いています。このため、太陽からの光は夏よりもななめに当たります。そうすると、冬の方が同じ面積にすこししか光が当たらないことになります。そして、太陽から受け取る熱の量が少なくなるのです。

 地球の太陽に対する傾きの方向は、北半球と南半球では逆になります。日本のある北半球の夏は、オーストラリアのある南半球では冬になり、日本の冬はオーストラリアの夏になるのです。

富山湾のしんきろう

 しんきろうは、温度のことなる空気の間で、光が折れ曲がることによっておこる、自然のいたずらです。

 光は、密度のちがうものを通るときに、折れ曲がる性質があります。これを光の屈折といいます。例えば、ガラスブロックに光を通すと、その表面で光が折れ曲がります。このような光の屈折は、密度の違う空気どうしが接しているところでもおきるのです。

 富山湾はしんきろうで有名なところです。富山湾のそばには、北アルプスがそびえています。夏が近づくと、北アルプスの冷たい雪解け水が富山湾にながれこみます。そのため、海面付近の空気が冷やされ、上空の空気と温度差ができます。

 温度の違う空気は、密度も違います。冷たい海面の空気と、暖かい上空の空気との間で光の屈折が起こり、富山湾をはさんだ反対側の景色が、じっさいの方向よりも上に、浮き上がって見えてしまいます。

 温度差がつくる光の屈折、それがしんきろうの正体なのです。

梅雨

 毎年6月頃、日本の本州から南では、雨の多い季節を迎えます。それが梅雨(つゆ)です。

 梅雨時の天気図を見ると、東西に長く延びる線があります。これが梅雨をつくりだす梅雨前線です。

 前線とは、性質の異なる空気の大規模な流れがぶつかるところです。ぶつかった空気は逃げ場がないので、上空に上がっていきます。このため、雲が発達し、雨を降らせます。

 梅雨の時期には、北海道の西から冷たい空気が、太平洋からは暖かい空気が吹きだしています。それらがぶつかる、数百kmもの範囲で梅雨前線がうまれて、雲の帯ができています。

 前線には、梅雨前線のほかにも、いくつかの種類があります。

 冷たい空気が、暖かい空気の下にもぐり込むのが寒冷前線です。寒冷前線は狭い範囲で、激しい雨を降らせます。

 暖かい空気が、冷たい空気の上に乗り上げるのが温暖前線です。広い範囲で、おだやかな雨を降らせます。

 梅雨前線は、暖かい空気と冷たい空気の勢いが同じくらいなので、前線が動かず、雨を降らせ続けます。7月頃、太平洋の暖かい空気が強くなると、梅雨前線は北に押し上げられ、梅雨が明けます。そして暑い夏がやってきます。


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