NHKジュニアスペシャル 第23回「わが太陽系」
VTR台本 PD:杉山
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│VTR 1 太陽が地球に与える影響 │
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カルフォルニア州 │05.36│Q ここはアメリカ・カルフォルニア州の
ホワイトマウンテンズ│ │ ホワイト・マウンテンズという
│ │ 標高3千メートルを越す山岳地帯です。
│ │
│05.44│Q ここには樹齢4千年を越える木が
│ │ 生えています
│ │ 松の一種、
│ │ ブリッスルコーンパインという木です
│ │
│05.55│Q ブリッスルコーンパインは成長が遅く
│ │ 樹齢4千年を越える木でも
│ │ 高さは10メートル足らずです。
│ │ 年輪も100年でわずか2・5センチ
│ │ ほどしか成長しません
│ │
│06.12│Q この木に直径1センチほどの穴をあけ
│ │ 年輪をくり抜きます
│ │ この木は樹齢2376年。
│ │ くり抜かれた年輪には、
│ │ 宇宙から飛んできた放射線の記録が
│ │ 残されています
│ │
│06.32│Q この放射線の量を調べることで
│ │ 過去の太陽活動の様子を
│ │ 知ることができるのです
│ │
│06.41│Q 年輪を調べると、およそ11年毎に
│ │ 太陽活動が活発な時期と弱い時期が
│ │ 繰り返されていることが分かります
│ │ 活動が活発な時期を極大期、
│ │ 弱い時期を極小期といって
│ │ 太陽の11年周期と呼ばれています
│ │
│ │
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│ │
│ │
│06.59│Q また17世紀後半に
│ │ 太陽活動が極端に弱い時期があった
│ │ ことがわかりました
│ │ この時期は太陽のマウンダー極小期と
│ │ 呼ばれ、65年間もの長い間、
│ │ 太陽活動が弱かった時期です
│ │ そのころの地球は
│ │ どんな様子だったのでしょうか
│ │
テムズ川 │07.09│Q ロンドンのテムズ川です。
│ │ 今は真冬でも凍ることはありません。
│ │
│07.17│Q 17世紀に描かれた絵画では
│ │ 川は完全に凍り付いています
│ │ 氷の上には店が建てられ、
│ │ 6頭で引く馬車を走らせることも
│ │ できたと言います
│ │ 太陽は、長い時間の中で、
│ │ 地球環境を大きく変えてしまうほど
│ │ 変化している星なのです
│ │
│ │
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│VTR 2 太陽の素顔 │
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地上の望遠鏡で見た太陽 │10.42│Q 地球から、望遠鏡で見た
│ │ 太陽です
│ │ ただ明るく輝いているだけのように
│ │ 見えますが、太陽の表面には
│ │ 実に様々な現象を見ることができます
│ │ 見えている部分は光球と呼ばれ、
│ │ 表面温度は、およそ6000度です。
│ │
黒点 │10.59│Q 黒く見えているのは
│ │ 太陽表面の代表的な現象、
│ │ 黒点です
│ │ 黒点の直径は大きなもので
│ │ 5万キロにおよび、
│ │ 地球の直径の3倍以上の大きさです
│ │
黒点UP │11.15│Q 黒点の温度はおよそ3500度
│ │ 黒く見えるのは回りよりも
│ │ 温度が低いために暗いからです
│ │
ようこうの映像 │11.25│Q この黒点は常に決まった場所に
│ │ あるわけではなく、場所も数も
│ │ 変化し続けています
│ │ この画像で明るく見えている所は
│ │ 黒点がいくつも現れている場所です
│ │ 黒点はこのように太陽の赤道付近に
│ │ 多く現れることが分かっています
│ │
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│ │
極大期・極小期2画面 │11.53│Q 右の画像では
│ │ 黒点があまり多く見られません
│ │ この画像は、左側が11年周期の極大期
│ │ 右側が極小期のものです
│ │ このように黒点は
│ │ 太陽活動の活発さを知る
│ │ 重要な手がかりとして観測が続けられて
│ │ います
│ │ この黒点がどのようにして現れるのか
│ │ ドップラーレーダーという特殊な
│ │ 観測装置で見た太陽を見てみましょう
│ │
太陽地場の様子 │12.20│Q この画像は太陽内部の磁気の力、
│ │ 磁場の様子を捉えたもので、
│ │ 黒がN極、白がS極を
│ │ 表しています。
│ │ 斑模様がはっきりしているところは
│ │ 磁場が強い部分です。
│ │ このような磁場の強いところでは
│ │ 太陽内部からのエネルギーが
│ │ 磁場の力によってせき止められて
│ │ しまいます
│ │ そのためにその部分は周りよりも
│ │ 温度が低くなり、暗く見えるのです
│ │
│12.45│Q エネルギーをせき止めてしまうほど
│ │ 強力な磁場。
│ │ これらは太陽内部の
│ │ ガスの動きによって発生します
│ │ そして多くの場合、
│ │ このように黒と白、
│ │ N極とS極が隣り合って存在して
│ │ 強い磁力線で結ばれています
│ │ 黒点以外の場所でも
│ │ 太陽には無数の磁力線が発生しています
│ │
│ │
│ │
│ │
│ │
磁力線の解析 │13.18│Q この磁力線を
│ │ コンピュータ・グラフィクスで
│ │ さらに詳しく見てみましょう
│ │ いくつもの磁力線がお互いに
│ │ 影響しあい、複雑に絡み合っています
│ │
太陽磁場の移動 │13.30│Q 太陽の磁場はこのように
│ │ 常に移動しています
│ │ ガスの動きに伴って、N極もS極も
│ │ 絶えず位置を変えているのです
│ │
磁力線 │13.54│Q その中で、磁力線は引き延ばされ、
│ │ 引きちぎられ、そしてまた
│ │ ほかの磁力線と結びつきます
│ │
│14.17│Q 明るく輝いている所などに
│ │ 薄い緑色の細い筋がたくさん見えます
│ │ これが磁力線の様子です
│ │ 明るく輝いている部分では
│ │ 数日の間に磁力線が
│ │ 激しく変化しています
│ │ このように磁場が強い場所は
│ │ 活動領域と呼ばれ
│ │ ほとんどの場合、近くに
│ │ 黒点がいくつも集まって発生しています
│ │
│15.12│Q 黒点を発生させる太陽の磁場は
│ │ ほかにも様々な現象を
│ │ 太陽表面に起こしています
│ │
フレア │15.24│Q そのひとつ、まるで太陽から
│ │ 炎が吹き出しているように見えるのは
│ │ フレアという爆発現象です
│ │ フレアがよく現れるのも
│ │ 黒点と同じように磁力線の動きが激しい
│ │ 活動領域です
│ │ 磁力線が激しく動き、ちぎれる時に
│ │ 磁力線のエネルギーが放出され
│ │ 電気を帯びた粒子のガスが吹き出すと
│ │ 考えられます
│15.43│Q ガスは、高さ1万キロから3万キロ、
│ │ 地球の直径よりも高く
│ │ 吹き出すことがあります
│ │ 吹き出したガスの温度は
│ │ 磁場のエネルギーによって
│ │ 2千万度にも上昇することがあります
│ │
プロミネンス │15.58│Q 磁場の影響によって現れる
│ │ もう一つの現象。プロミネンスです。
│ │ フレアが、磁力線の動きが激しい
│ │ 活動領域に多く見られるのに対して
│ │ プロミネンスは活動領域以外の場所にも
│ │ 多く見られます
│ │ それらの場所では磁力線が
│ │ 比較的安定しているので
│ │ プロミネンスは
│ │ その安定した磁力線に支えられて
│ │ 雲のように浮かんでいます
│ │
│16.24│Q 磁場の影響はフレアやプロミネンスの
│ │ さらに外側にまで広がっています
│ │
日食の観測 │16.32│Q 今度は太陽の一番外側の大気
│ │ コロナを見てみましょう
│ │ コロナはとても希薄なガスの層ですが
│ │ 皆既日食の時には地球からでも
│ │ 肉眼で観測することができます
│ │
│ │Q このコロナも磁場の影響を受けていて
│ │ 磁場の強さによって
│ │ 厚いところがあったり、薄いところが
│ │ あったりします
│ │
│ │Q コロナの温度は100万度。
│ │ コロナはフレアなどを起こす
│ │ 磁力線のエネルギーが放出されたときに
│ │ 熱せられると考えられています
│ │
│ │
│ │
│ │Q またコロナに向かって放出された
│ │ ガスは、コロナの更に外側にまで達し、
│ │ 宇宙空間に広がっています。
│ │
コロナグラフ │17.15│Q コロナグラフという観測装置では
│ │ コロナから飛び出すガスの様子も
│ │ 見ることができます
│ │
│17.30│Q 太陽からでるガスは太陽風と呼ばれ
│ │ 太陽系の一番外側の惑星
│ │ 冥王星をはるかに越えた宇宙空間にまで
│ │ 広がっています
│ │ 太陽風には放射線が含まれていて
│ │ 地球の生命にとっては有害ですが、
│ │ 太陽系の外の宇宙から来る
│ │ 別の放射線から、太陽系の惑星を
│ │ 守るバリアにもなっています
│ │
│ │Q 太陽風を目で見ることはできませんが
│ │ 太陽風によって起こる現象は
│ │ 地球からでも観測することができます
│ │
│17.56│Q そのひとつ、彗星です
│ │ 彗星は太陽に近づいてきた
│ │ 氷のかたまりです
│ │
│18.00│Q 氷のかたまりと太陽風がぶつかると
│ │ チリやガスが吹き出し、
│ │ 太陽風によって流されます
│ │ 彗星が尾を引くメカニズムには
│ │ 太陽風が大きく影響しています
│ │
│18.15│Q また太陽風が地球の大気と衝突すると
│ │ 地球の磁場の影響を受けて
│ │ 北極や南極の近くでは
│ │ オーロラを発生させます
│ │ オーロラもまた
│ │ 太陽風の影響で現れる現象なのです
│ │
│ │
夕日 │18.37│Q 一見、ただ明るく輝き、光と熱だけを
│ │ 放っているように思える太陽ですが、
│ │ 太陽は生命に有害なものも含めて
│ │ 膨大なエネルギーを宇宙空間に
│ │ 放出する、活発に活動している
│ │ 星なのです
│ │
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│VTR 3 ニュートリノの観測 │
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町並み │22.30│Q アメリカ、サウス・ダコタ州の
│ │ ホームステーク鉱山。
│ │ ここはかつて金を掘るために
│ │ 集まった人々で賑わった町です
│ │
観測所 │22.40│Q その時掘られた金鉱山の跡に
│ │ 太陽観測所があります
│ │
地下の観測所 │ │Q 金を採るために掘られた穴は
│ │ 地下2000メートルにまで
│ │ 達しています
│ │ その深い地中で観測されているのは
│ │ 太陽の中心から放出される
│ │ ニュートリノという電子のような
│ │ 物質です
│ │
太陽内部模式図 │23.03│Q ニュートリノは太陽の光や熱と
素粒子の放出│ │ 同じように、太陽の中心部分で起こる
│ │ 核融合反応によって生まれます
│ │
│23.13│Q 核融合反応よって生まれた光や熱は
│ │ 太陽の中心から表面までを
│ │ 10万年以上かけて伝わり、
│ │ 太陽の表面からおよそ8分で
│ │ 地球に届きます
│ │
│23.29│Q 一方、光や熱と同時に生まれた
│ │ ニュートリノは
│ │ ほんの数秒で太陽表面に到達し
│ │ およそ8分後には地球に届いています
│ │ つまり地球に届いたニュートリノを
│ │ 観測することで10万年以上あとの
│ │ 地球に届く太陽のエネルギーを
│ │ 予測することができるのです
│ │
│ │
│ │
地下の観測所 │23.50│Q ニュートリノは、ほかの物質と
│ │ ほとんど反応しないために
│ │ 地球も通り抜けてしまいます。
│ │
│24.00│Q しかし、
│ │ ニュートリノ以外のほとんどの物質は
│ │ 地球の大気や地面と反応して
│ │ 地中深くまでは届きません
│ │ ここでは厚さ2000メートルの地面が
│ │ バリアの働きをするので
│ │ 地球を通り抜ける
│ │ ニュートリノを観測することが
│ │ できるのです
│ │
│ │Q ここでは、1カ月間の観測によって
│ │ わずか10個足らずですが
│ │ ニュートリノの観測に成功しました
│ │ ニュートリノは
│ │ 太陽内部の様子を知る
│ │ 貴重な手がかりとして、その研究に
│ │ 期待がかけられています
│ │