NHKジュニアスペシャル 第22回「はるかなるET」 VTR台本 PD:杉山


VTR1 PIONEER#10

(宇宙空間のパイオニア)

 1972年、アメリカ航空宇宙局NASAによって、太陽系の惑星を探査する、パイオニア10号が打ち上げられました
 パイオニア10号は惑星の探査を終えたあとも、地球から100億キロ彼方を飛び続けています。

(メッセージボード)

 この探査機には地球以外の生命、ETに向けて、太陽系の位置や人間の身体の大きさなどを表した メッセージ・プレートが取り付けられています。 太陽系を出たあと、探査機が他の恒星の近くを通過するまでに、数万年かかります。
ETへのメッセージは、はるかな未来に向けて宇宙空間を運ばれているのです。

VTR2 MARS PATH FINDER

(MPF打ち上げ)

 1996年、最新鋭の火星探査機マーズ・パス・ファインダーの打ち上げです。

(宇宙のMPF CG)

 パス・ファインダー計画では、火星を探査するために 新しい技術がいくつも取り入れられました。

(パラシュート〜エアバッグCG)

 探査機の着陸方法もその一つです。火星の大気圏に突入した後、着陸の10秒前に探査機はエア・バッグでスッポリと包まれます。

(探査機落下CG)

 そして、そのまま地上に落とされ、何回もバウンドしながら、着陸します。

(バウンドCG 2カット)

 この方法だと、着陸するための機材や燃料を、大幅に節約することができます。

(エアバッグを閉じる 2カット)

 着陸に成功した探査機ランダーは、自動でエア・バッグをたたみ込みます。

 そして3枚の太陽電池パネルを開きます。

(電池パネル開きCG)
(パラレルカメラCG)

 ランダーには、横に並んだ2台のカメラが搭載されています。

(2重画像)

 このカメラで撮影された映像は、画像処理によって、立体映像や360度のパノラマ映像として見ることができます。

 これらの画像によって、岩までの距離など、地表の様子を詳しく知ることができます。

(ローバー実写3カット)

 またランダーは、自由に移動する事ができる小型の地上探査車、ローバーも搭載しています。

(ローバー地上4カット)

 高さ30センチ、重さ10・5キロ。1分間におよそ42センチのゆっくりとしたスピードで動きます。

 前方の2台のカメラをはじめ様々な観測装置が取り付けられています

(バーチャル2カット)

 ローバーは地球のコンピュータでリモート・コントロールされます。

(電波搬送イメージ)

 この頃の地球と火星の距離を電波が往復するのにおよそ21分かかります。

(バーチャル)

 火星から送られてくる映像を見てから急ブレーキをかけても手遅れになってしまいます。
 そのためコンピュータで、あらかじめローバーの動きをシミュレーションして、安全を確認します。
 それから、実際に電波を送ってローバーを動かすのです。

(ランダーCG)

 これらの新しい技術によって、惑星探査の歴史の中で、はじめて、行きたいところに行って、直接岩石の成分を分析するなど、 詳しい探査が行われました。

(気象観測マスト)

 地面ばかりでなく、大気についても、ランダーの気象観測装置によって詳しく調べられました。

(気温の様子)

 火星の表面は、気圧が地球の100分の1しかありません。そのため、熱が伝わりにくく高さが75センチ違うだけで、気温は14度も違います。

(気温差)

 さらに、一日のうちでもおよそ70度も気温が変化します。 火星の、冷たく過酷な環境がハッキリと現れました。

(地表の様子角の丸い石3カット)

 またランダーが撮影した映像から、水によって流された岩石が重なり合っている場所が見つかりました。
 洪水で流されたと思われる岩石は、角が取れて丸みがあります。 これは水に流されたときに削られたと考えられます

(地表の様子ルーズPAN)

 このような岩石の様子から、このあたりには大量の水があったということがうかがえます。

(ローバー実写)

 一方ローバーは、それらの岩石を調べることで、火星の過去の様子を知る手がかりを見つけました。

(APX分光計)

 ローバーに取り付けられた(APXS)という計測器は、放射線を使って、岩石に含まれる成分を詳しく調べることができます。

(ローバー実写(成分分析結果))

 分析の結果、地球の安山岩によく似た、溶岩のような岩石が見つかりました。 ケイ素という物質の割合が、 安山岩に含まれる割合と一致したのです。 安山岩が出来るためには大量の水が必要だと考えられています。

(岩石CG)

 また、れき岩のような岩石も見つかりました。

(れき岩3カット)

 れき岩は水や氷河などによって砕かれた岩石の破片が、 水中に降り積もって固まった岩石です。 れき岩があるとすれば、 それも、火星に大量の水があったことの証なのです。

VTR3

(シャトル打ち上げ)

 ガス惑星の代表、木星を探査するガリレオの打ち上げです。ガリレオによる木星の探査は、 地球以外に生命が存在する可能性を探るものでもありました

(木星とガリレオCG)

 木星の直径は地球のおよそ11倍。しかしそのほとんどはガスでできています

(プローブ切り放し2カット)

 そこでガリレオには、直接、木星のガスの様子を調べるプローブという小型の観測器が搭載されました

 ガリレオから切り離されたプローブは木星に向かって落下していきます。

(大気圏突入)

 ガスに突入を始めたプローブ。木星を直接探査するのは初めてのことです。

(パラシュートを開く)

 パラシュートを開いていよいよ観測が始まります。

(大気中を降下するプローブ)

プローブは木星の気圧やガスの成分などを分析して、ガリレオに電送しました。 しかしおよそ1時間後、プローブからの信号は途絶えました

(大気中を降下するプローブ)

 短い時間でしたがプローブは ガスの外側から165キロの深さまで 進みました。
 観測結果によると、その付近のガスの温度は152度もありました 太陽からの熱だけで こんなに高い温度になるとは考えられません。 木星の内部に熱源があると考えられます

(木星CG)

 またこの観測によって 木星の雲の様子も 明らかになってきました 色の違いは雲の高さの違いを 表しています

(雲の様子UP CG)

 赤く見える部分は下の方の雲白い部分は上の方にある雲です

 また青いところは ホットスポットと呼ばれる場所で 温度が高く、 雲にポッカリと穴があいています

(雲の様子立体シムCG)

 観測結果をもとに、木星の赤道付近の雲の様子を描いてみました

 これまで、木星には3層に重なった雲があると考えられていました。
 しかしガリレオとプローブによる本格的な探査の結果、雲の層は、2つしか確認されませんでした
 木星の雲は2層なのか、3層なのかそれとも場所によって違うのか、まだ謎に包まれています

(ガリレオ衛星軌道)

 ガリレオは木星だけでなく、その周りを回る衛星の探査も行いました

(ガリレオ衛星PAN)

 木星の衛星は16個ありますが、その中でも大きなガニメデ、カリスト、 エウロパ、イオという4つの衛星は、 その発見者である、ガリレオ・ガリレイの名を取ってガリレオ衛星と呼ばれています
 そのガリレオ衛星の一つ、エウロパの探査には、ETの可能性を探るという目的もありました

(木星とエウロパ位置関係)

 エウロパの直径は3000キロ。月とほぼ同じくらいの大きさです

(エウロパ撮りきり2カット)

 エウロパの表面は一面厚い氷に覆われていますしかし木星の強力な引力によってエウロパがわずかに歪むため氷はあちこちでひび割れています
 又、その歪みのために内部で摩擦熱が発生し深いところでは氷が溶けて海を作っていると考えられているのです

(表面の写真 亀裂)

 ガリレオの観測でもエウロパの表面にひび割れが確認されました。

(表面の精密写真)

 写真をさらに詳しく分析すると薄く張った氷が割れた跡も見つかりました
 氷の下に海があるとすれば、地球と同じような生命が誕生しているかも知れないと考えられているのです


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