NHKジュニアスペシャル 第21回「はるかなる宇宙への旅立ち」VTR台本 PD:矢野


VTR1

夜空は宇宙への窓? 個性いろいろ・星たちの世界 (6'51")  

夜空を埋め尽くした星々、まるで宝石箱をひっくり返したようです。

静寂の大宇宙。

そこでは、星々の生死のドラマが、休むことなくくり返されています。 

恒星(太陽)とは

星々のほとんどは「恒星」と呼ばれます。恒星は、内部で激しいエネルギーを生み出して、自ら光を出している星です。

私達に一番身近な恒星は、太陽です。太陽は地球から非常に近いので、他の星とは全く違って見えますが、夜空に輝く星々と同じ仲間です。

特殊なカメラで撮影した、太陽の表面の様子です。温度は6000℃にもなります。表面のガスが渦を巻き、炎のように吹き出しています。

太陽の中心部分は、1500万℃という高温です。ここで、水素が核融合反応を起こし、発生したエネルギーが、長い時間をかけて、表面に伝わって来ます。

私たちが太陽の光を暖かく感じるのは、このすさまじいエネルギーが、放出され続けているからなのです。

夜空の星も、太陽と同じように光や高熱を発しています。では、これらの「恒星」は一体どのようにして生まれるのでしょう。  

恒星の誕生

星の材料は、宇宙空間に漂っているガスやちりです。これが集まると「原始星」と呼ばれる星の卵が生まれます。

ガスとちりがさらにたくさん集まると回転を始め、原始星の周りに円盤ができます。

原始星の中心では、しだいに温度と圧力が高まって、すさまじい光と熱を放つ「核融合反応」が始まります。

核融合を始めた星は、やがて一人前の星となって輝き始めます。中央で明るく光る生まれたばかりの星。周りには、ガスが薄く残っています。

数千万年前に生まれた、若い星々、すばるです。滲んだように見えるのは、周囲に残るガスのためです。

こうして今も宇宙のどこかで、新しい星が誕生しているのです。  

恒星の死

明るさ、色、一つ一つ違った姿を見せてくれる星たち。その生涯もまた、様々です。

オリオン座の右下に青く明るく輝いているのは、太陽の数十倍もの重さを持つ星、「リゲル」です。

青い星は、重い星です。太陽の百倍以上、重いものもあります。重い星は、数百万年程度で、短い一生を終えます。

私達の太陽のように軽くて黄色い星は、寿命が長く100億年も輝き続けます。

青くて重い星は、中心のガスを燃やし尽くすと、赤く大きく膨れ上がっていきます。そしてやがて、凄まじい光を放って爆発します。これを超新星爆発といいます。

おうし座のかに星雲。超新星爆発の名残りのガスやちりです。今も時速430万キロという猛スピードで、宇宙に拡がり続けています。

一方太陽のような軽くて黄色い星も、年をとると、どんどん膨れていきます。そして大量のガスが周りに散らばり、中心には小さな残骸が残って一生を終えます。

こと座のM57リング星雲。まん中の白い小さな点が、星の燃えかすです。美しいリングは、星を作っていたガスが、宇宙空間に拡がったものです。

死を迎えた星が放出したガスや塵は、また新しい星を生み出すための材料になるのです。  

惑星

恒星の誕生と同じ時期に、別の星も生まれます。

恒星の周りに残ったガスやちりが集まって、やがて固まり、星になります。これが私たちの地球のような「惑星」です。

恒星に近いところでは、主に岩石や鉄でできた火星や地球のような惑星ができます。

一方恒星から遠い所では、氷やガスを主な成分とした、木星・土星のような惑星が誕生します。 

私たちの太陽の周りにある9つの惑星は、大きさ、材質などどれも違っています。でも、元々は同じガスや塵から生まれた、兄弟なのです。

繰り返される星々の誕生と死。地球も、そこで暮らす私たちも、宇宙の壮大なドラマの一こまを生きているのです。


VTR2

観測技術の歴史・ガリレオから巨大望遠鏡へ(6'50")

望遠鏡の歴史

 宇宙の謎を解くために、人類は新しい観測技術を次々と生み出してきました。

 口径わずか4p。この小さな望遠鏡から、人類の天体観測の歴史はスタートしました。 

 1609年、ガリレオ・ガリレイが、世界で初めてこの望遠鏡を木星に向けました。       

 ガリレオが描いた、木星の観測図です。地道な観測の結果、木星の周りを4つの星が回っていることを発見しました。「それなら、太陽の周りを地球が回っていても不思議はない」とガリレオは考えました。

 地球が宇宙の中心にあるというのが常識だった時代。小さな望遠鏡によるガリレオの発見がコペルニクスの唱えた地動説を裏付けたのです。

 観測技術は進歩し、1780年代には、口径50センチの望遠鏡も作られるようになりました。

 イギリスのウィリアム・ハーシェルは、この望遠鏡で、夜空に見える星のひとつひとつを丹念に記録しました。

 その結果、ハーシェルは、太陽も夜空にきらめく星のひとつに過ぎないと考えたのです。    

 1918年には口径2・5メートルの大型望遠鏡が完成します。その後現在までに、望遠鏡はどんどん大型化し、性能も上がり続けてきました。より遠くの宇宙を観測し、天文学の常識をくつがえす発見を繰り返して来たのです。

地上の最新鋭・すばる望遠鏡

 地上で最も星空が美しいと言われる、ハワイ島・マウナケア山の山頂です。世界最新鋭の望遠鏡、すばる。日本の国立天文台が技術を結集して作りました。

 すばる望遠鏡の鏡は、直径8・2メートル。大きな鏡で遠くの星のかすかな光を集め、小さな鏡に反射させます。反射した光は、大きな鏡の中央に開いた小さな穴に取り入れられて、後ろにある観測装置で記録されます。

 この巨大な鏡のおかげで、100億光年より遠い星まで観測できるのです。

 こちらは、口径60センチの望遠鏡で観測された土星です。輪に注目して下さい。板のように見えます。すばる望遠鏡で見た土星と比べてみましょう。すばる望遠鏡で見ると、輪のまん中に黒いすきまがあることがはっきりとわかります。

 すばる望遠鏡で見た木星です。左側に見えるのは、木星の周りを回る星、エウロパです。木星の表面にエウロパの影まで、はっきり写し出されています。

宇宙の最新鋭・ハッブル

 人類は、望遠鏡をスペースシャトルに載せて、宇宙空間に打ち上げるという画期的な方法をもあみ出しました。

 上空600キロの大気圏外に浮かぶ、ハッブル宇宙望遠鏡。大気の影響を受けないため、くっきりと鮮明な画像を映すことができます。

 これはハッブル宇宙望遠鏡が捉えた火星の映像です。地上の望遠鏡のものと比べてみます。大気の影響がある場合とない場合で、これだけ違いが出て来るのです。

 ハッブル宇宙望遠鏡は、回転している火星の映像を1年以上にわたって撮影し続けています。送られて来た画像データを、位置を合わせたり色を修正したりして合成し、火星の全体像を作り出すことができます。

 それでは、最新の観測映像を御覧下さい。

 これは、誕生しつつある星の姿です。ハッブル宇宙望遠鏡は、これまでになく、その姿を鮮明に捉えることを可能にしました。

 M16わし星雲。ガスやちりでできた雲が、にょきにょき伸びた柱のように見えます。

 柱の先にある突起。小さく見えますが、実は、太陽系がすっぽりと入ってしまうほどの大きさです。この中では、間もなく原始星が生まれようとしています。

 キャッツアイ星雲です。広がっていく赤いガスと、中心の星の白い燃えかすが、ハッキリと見えます。データを元に、コンピュータグラフィックスで立体的にすることもできます。

 ガリレオの時代から400年。望遠鏡の進歩と共に、私たちの宇宙観は大きく変わりました。そして今も、宇宙の謎に迫る挑戦は続いているのです。


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