氷期になるしくみ
2002.1.27
氷期の定義は、たぶん、大陸上に氷床が発達し、地球全体が寒冷化する
時期を指すのですが、それもどの程度の期間を指した氷期か、によって、
説明が異なります。
地球史的に見ると、氷床が存在する時期というのは限られていて、ほと
んどの時代は今の南極大陸やグリーンランドのような氷床はありませんで
した。ですから、大きな意味ではじつは現在も氷期の最中である、と言う
ことができます。
もちろん、細かく見れば、氷期−間氷期サイクルの中の間氷期にあたり
ますので、ふつうは氷期と言うときには、この200万年余りの間継続し
ている、十万年くらいのスケールで繰り返して起きた、氷床の拡大・発達
と縮小のサイクルの、寒冷期の方を指すことが多いのですが。
それで、大きな時間スケールで、大陸上に氷床が発達できる条件は、ひ
とつには南極あるいは北極周辺に、大陸があることと、もう一つには大気
の温室効果の低下があります。
大陸は分裂・集合を繰り返しますが、その過程で、南極や北極周辺に大
陸がある場合に、そこに降り積もった雪が氷床に発達する可能性がありま
す。極域が海だと、夏に氷が融けますし、また氷床として氷が積み重なる
ことができない…台がない、浮いた氷は断熱材になって、それより深いと
ころの熱を大気圏外にあまり逃がさない…ということになります。
大気の温室効果の問題は、大気には火山活動などで二酸化炭素がある割
合で供給されていて、また生物の光合成活動などで、大気から二酸化炭素
が除去されています。このバランスが偏ると、大気中の二酸化炭素が増減
することになります。
過去の、例えば4.5億年ほど昔(オルドビス紀末〜シルル紀)の氷期は、
造礁性サンゴの出現で、二酸化炭素が消費されたことが関係していると見
られますし、3-2.8億年ほど前(石炭紀末〜ペルム紀)の氷期は、石炭紀に
発達した大森林による石炭形成と、その過程での二酸化炭素の吸収が効い
ているとも考えられています。
逆に、大陸が分裂を開始した中生代には、火山活動による二酸化炭素の
放出が多く、したがって氷床は全く形成されず、温暖な気候が続いたと考
えられています。
現在の氷床の発達は、大陸移動の進行と共に火山活動が低下したことと、
大陸の配置が極にやや寄っていて、氷床が形成されやすいことの両方があ
るようです。
次に、十万年のスケールで氷床が形成されるしくみですが、地球の自転
や公転のわずかなずれがきっかけとなって、極地方の夏が寒くなり、冬に
降った雪が融けずに残り、積み重なっていくことがきっかけになると考え
られています。夏が寒くなるには、近日点と遠日点の位置のずれや、公転
軌道の位置のずれ、地球の歳差運動(自転軸の傾きの変化)などが絡み合
っています。
いったん、地表を雪や氷が覆うようになると、そこでは太陽光が反射さ
れやすくなり、熱が吸収されにくくなり、より寒くなる、という正のフィ
ードバックが働き、寒冷化が急速に進行すると考えられています。
しかし、実際のところ、氷期の開始や終了はかなり急激な変化でして、 それがどのようなメカニズムで進行するか、最近は深層流の変化など、海 洋の働きも重視されていて、海水の循環による熱輸送がうまくいかなくな ると、極地方が寒冷化する、ということも氷期のきっかけになると考えら れていたり、一筋縄ではいきません。