火成岩のなかに、アルカリ岩(alkaline rocks)と呼ばれる岩石のグループがあります。
厳密な定義は別にして、簡単にいえば、アルカリ金属元素(K,Na,,,)が通常よりも多く含まれる火成岩です。
普通は、教科書の岩石分類などには出てこないのですが、重要な岩石群です。 火山岩としてはホットスポットの火山活動などで見られることがあります。
このようなマグマの成因には、マントルでの部分融解の条件が大きく関わっています。アルカリ金属元素は、マントルの造岩鉱物には入りにくく、
マグマに入りやすい(=incompatibleな)挙動をします。結晶とマグマが存在すると、マグマの方に選択的に含まれやすいのです。
一方、アルカリ金属元素は、マントル中にはもともと少量しか含まれていません。ですから、マグマの割合が大きいと、
アルカリ金属が全部マグマに移っても、濃度は薄められてしまいます。
従って、部分融解の度合いが小さいほど、アルカリ岩ができやすい、ということになります。
もうひとつは、マグマができる場で、CO2がはたらくと、アルカリ岩ができやすいことが知られています。 これは部分融解の度合いとも関係がありますが、マグマの性質(粘性など)の問題でもあります。
一般に、アルカリ岩のマグマはマントルのやや深いところからもたらされます。実験岩石学の成果で、 温度や圧力、水や二酸化炭素の存在の条件によって、どのようなマグマができるかがわかっており、 それを逆に実際のマグマに適用して読みとることが可能になっています。
現在のマグマ活動についてはそのような手法が可能ですが、過去に大量のアルカリ深成岩を形成したマグマの活動は、
謎が多いところがあります。(僕が理解していないだけかもしれませんが。)
大陸には、アルカリ深成岩(閃長岩など)が多く見られるところがあります。原生代中期(10-16億年前)の北米〜スカンジナビアにかけて、
グレンビル帯と呼ばれる地質区がありますが、そこにはアルカリ深成岩が多く見られます。ビルの外壁に斜長石が青くぴかぴか光る石材がよく用いられますが、
それはこのグレンビル帯の延長である、ノルウェーに産出するアルカリ岩の一種(ラルビカイト)です。
#ラルビカイトは原生代のものではなく、オスロ・リフトと呼ばれる地域の古生代後期(ペルム紀、290Ma)の深成岩のようです。
2000.5.27/2013.1.12修正 萩谷 宏