岩石の酸性・塩基性とは?


 火成岩の分類は、教科書的には、化学組成・特にSiO2の重量%と、組織(斑状=火山岩、等粒状=深成岩) を基本にしています。

 具体的には、SiO2が45-52%の火山岩を玄武岩、52-66%の火山岩を安山岩、66%以上の火山岩を流紋岩といいます。 同様に、深成岩の場合は、それぞれの成分範囲に応じて、はんれい岩、閃緑岩、花崗岩と分類されます。

 このような火成岩の分類について、SiO2が45-52%の範囲を塩基性、52-66%を中性、 66%以上を酸性、という具合に表現する場合があります。

 岩石にリトマス試験紙をつけても変化しませんし、水溶液でわれわれが知っている、酸性やアルカリ性とは定義が違うようです。 いったい、どうして酸性とか塩基性、という言葉が使われるのでしょうか?

 以下は僕の解釈です。正しいという保証はできません。

 H4SiO4などのかたちで、珪酸という酸が存在します。常温では溶解度は低いの ですが、高温の水ではけっこう溶けることができます。これが電離したかたちでは、 SiO44-のようなイオンにな るわけですが(かっこ内はイオンの価数で、右肩上にあると思ってください。)、 岩石をつくる造岩鉱物は、ほとんどがこのSiO44-四面体の骨組みでできていま す

 一般の造岩鉱物では、SiO44-の骨組みだけですと、結晶がマイナスに帯電し てしまうわけで、実際には陽イオンを適当に組み込むことで、価数を合わせ、電 気的に中性になっています。例えば、Mgかんらん石はMg2+2つとSiO44-ひと つを組み合わせることで、中性を保っています。
 石英(SiO2)については、電気的なつり合いだけを考えれば、SiO44-の骨組み ひとつにSi4+をひとつ加えることで、中性を保っていると考えれば説明できま す。(結晶構造はとりあえず考えないことにして。)

 SiO44-との電気的なつり合いを保つために、多くの造岩鉱物は、その種類に よって様々に、Mg2+やFe2+、Ca2+、K+、Na+、 などのプラスのイオンを結晶内部に持っているわけですが、これらは水溶液中であれば、 塩基としてふるまうイオンです。

 酸性岩(acidic rock)は、成分的にSiO2の多い、すなわち珪酸という酸の成分の 多い岩石に対してつけたのだろう、と考えてもいいのではないでしょうか。教科 書的にはSiO2重量%で66%以上の岩石、ということになっていますが。

 SiO2の少ない岩石では、その分、Ca,Mg,Fe,・・・のような、いわゆる”塩基”性 の元素が一般的に多くなっています。そこから塩基性岩(basic rock)という言葉 が生まれたのではないか、と想像します。

 現在では酸性岩、塩基性岩という分類は現場ではあまり使いません。 フィールドネームなどで、慣用的に用いる場合はありますが、どちらかというと 珪長質・苦鉄質、それでもわかりにくいのでシリカが多い、少ない、 さらには玄武岩質の(組成の)・・・などという表現の方が使われていると思います。
 大学入試でも、最近のセンター試験では、塩基性や酸性という表現を使うこと はあまりありません。でも、当分はこれらの言葉は残るでしょう。混乱するの であまり使いたくないのですが。(花崗岩にリトマス試験紙をつけたら赤くなる か、なんて・・・。)


 2000.5.20 萩谷 宏 

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