地球科学概論(1)の講義に関する質問・意見と回答その2

−質問はできるだけ授業中か授業後に直接どうぞ。

 

7/14

*地質学者は標高何千mもある山で、たくさんの化石やサンプルをどうやって持ち帰るのですか?

 本格的な調査の場合、梱包して一ヶ所に集積し、ヘリで運ぶことが多いと思います。僕もグリーンランドではそういう調査をしました。内陸での2週間の調査は、機材だけで2トンあって、その上げ下ろし、積み込みの作業に明け暮れて、すごく筋肉がついたのを覚えています。片手の指立て伏せが軽くできましたね。

*まったく動いていない大陸はありますが?

 地球ではないですね。南極大陸が比較的動きが少ない大陸ですが、それはここ1億年くらいの話ですし。それ以前はだいぶ動いています。

*枕状熔岩はヒマラヤにもあるのですか?

 どこかにはあると思うのですが、具体的には知りません。

*アンモナイトは全世界に存在したということでしょうか?

 そうです。いまのイカ・タコの仲間で、浮遊して生活するものが多いので、海流に乗って広く分布していたと考えられます。

*アンモナイトやベレムナイトも発見した人が名前を付けたのでしょうか?

 前からその存在は知られていたので、発見した人が命名したというわけではないでしょう。えらい学者が本を書くときに呼び方を決めて、それにみんな従ったということではないですか。ただし、イカとかタコとか、アンモナイトというのはそのくらいの大ざっぱなくくりであって、正式な学名である、属名・種名は、命名規則に則って発見者(記載者)が決めています。

 

7/7

*特技の欄に「何ボルトか触ればわかる」って書けますね

 いえ、そういう特技は隠していた方が無難だと思うのですが。

*地球の年齢論争で、結局は地質学と物理学どちらの方が世界では信頼されているのですか?

 どちらが、という話ではないのですがね。物理学としてもケルビン卿の計算は不完全だったわけで、なぜなら放射壊変の熱の供給を計算にいれていなかったわけですから、物理学がどうこうという問題以前の話です。地質学が時間の物差しを手に入れるために奮闘した歴史が、20世紀の放射年代学の発展だと言えます。

*石油の質の違いについて詳しく教えてください?

 詳しく知りたければ本を読んでもらうしかないのですが、石油は分留といって、融点・沸点の違う様々な油が一緒になっているのを分けて、軽油とかガソリンとか重油のように分けて使っているわけです。重油の多い石油は、常温ではねっとり固まっていますし、軽油やガソリンの成分の多い石油は、常温でもさらさらしています。主に、そういう違いだと思ってください。

*日本で一番堆積岩が多くある県はどこですか?海外ではどこが多いですか?

 何をイメージしてそういう質問をしているのかわかりませんが、地層の厚みという意味では、北海道の日高山脈をつくるエゾ層群が非常に厚い堆積岩の地層ですね。海外ですか?最近の堆積岩で分厚いのは、アルプス−ヒマラヤ地域と、環太平洋地域の付加体かな。

*宇宙空間では宇宙線や放射線が飛び交っているようですが、これは物性の半減期に影響しないのですか?

 放射性物質の半減期の話ですよね。原子核の中の問題ですので、宇宙線が分子の結合を壊すことはあっても、原子核にはあんまり影響しないでしょうし、半減期というのはある核種の安定性を表していて、宇宙線が当たって原子核がこわれて別の核種になった場合は、半減期の問題ではなくなるのではないですか。娘元素も違ってくるので、そういう不幸な原子核は年代の計算には含まれないことになると思います。

 

6/30

*スコットランドで案内してくれた人が火山学者だったとのことですが、どのあたりがクレージーだったのですか?

 いや、まともな人でした。火山学者は火山を前にしたときに豹変するのです。

*気候はどうでしたか?

 出発前は寒いだろうと思っていたのですが(最高14度/最低3度)、行ってみると意外と暖かくて、快適でした。北緯56度なので、東京よりはるかに北、北極圏まであと1000kmちょっとなのです。北大西洋海流の熱輸送の偉大さを身に染みて感じましたね。

*数百年以上前まではどのようにスケールを測っていたのですか?

 地質年代の尺度は、まったくなかったのでしょう。化石が古い時代の生物の痕跡だということを認めるようになったのは、たかだか300年くらい前のことですし。(ギリシャ時代にすでに化石をそう認識していた学者はいた。)

*地層や化石以外に地球の変化を知るのに何があるのか?

 南極やグリーンランドの氷床に閉じこめられた空気も、一種の化石として使えます。また、火山の溶岩や、鉱物も「化石」として使えます。例えば地球の磁場の逆転の歴史は過去の熔岩に記録されています。

*スコットランドの食事はどうだったのですか?

 別にまずくはありませんでしたよ。エディンバラ大学の寮で生活していたからかもしれませんが。街で食っても悪くなかったです。イモとかカブとか、現地の食材をもともと僕が好きだということもあるかもしれませんが。イギリスの飯はまずいというのは、主にイングランドじゃないのかな。ハギスもうまかったし。

 

6/16

*現在は太陽が活発に活動しているのですか?

 11年周期の太陽活動でいくと、現在が底で、そろそろサイクル24の上昇期に入るはずです。

*授業中の映像に出てきた宇宙線とは、具体的にどのようなものなのですか?

 光速の数十%に達する高速で飛来する、電子や陽子、ヘリウム原子核などの荷電粒子のことです。

*放射線を反射させることのできる物質はありますか?

 ないと思います。

*年輪は正確に、その樹木の年齢がわかるのですか?

 樹種やその土地の気候によると思いますが、中緯度〜高緯度では信頼性は高いと思います。

*これからもっと効率のよい年代測定法は生まれるのか?

 Hf-Os法の実用化以降、あまり思いつかないのですが、生まれるかもしれませんね。

*原子番号順にひとつ下の元素に壊変が進行するのはなんとなくわかるのですが、ウランから鉛はとーっても離れていますよね?その間、いろいろな原子に化けるのですか?

 その通りです。授業では省略してしまいましたが、「ウランの壊変系列」で検索してみてください。参考書としては、「地球化学」講談社、松尾他、がお勧めでしょうか。

 

6/9

*授業中に回ってきた鉱物にオパールがありましたが、あれは全体がオパールですか?それともあの中の一部ですか

 あの石はもともと流紋岩という、熔岩の一種で、そこに地下水から沈澱した珪酸分が隙間を埋めて、オパールになっているのです。ですから、一部がオパールだと思ってください。

*新しい島は近いうちにできないのですか?

 どこの話ですか。日本付近では、どうかな。ちょっと期待薄かもしれませんね。

*隆起を人工的に早めることは可能性としてあり得ますか?

 まず無理ですね。人間の使えるエネルギーに対して、地殻の変形や厚みの変化に関わるエネルギーと大きさが膨大すぎるので、破壊的なことはまだ可能かもしれないが、隆起は難しいな。

*これから先も大陸のかたちは変わっていくのですか?

 変わっていきますね。確実に。

*日本で一番アイソスタシーが大きいところはどこですか?また、世界一の場所はどこにあるのですか?

 アイソスタシーというのは「つりあい」というような意味です。ですから最大のところなどというのは意味を成しません。

*隆起はどこまでも続くのか?

 隆起は地殻の厚みや密度によって限度があるでしょう。あまり地殻を厚くしても、下の方が融解してしまうので厚くならなくて、60kmというヒマラヤやアンデスのところの厚みが限度のようです。

*2枚の偏光板に鉱物をはさむとなぜ向こうが見えるのですか?

 鉱物の中には、光学的異方性といって、光が特定の方向に分かれて進む性質を持ったものがあり、雲母もそのひとつです。片方の偏光板を通った光は、ふつうはそのまま進むと、90度角度を変えた偏光板にシャットアウトされて、まったく光が通らないのですが、雲母のような鉱物をはさむと、その鉱物の中で光の方向が変わるので、直角に配置した2枚目の偏光板の方向にも光の成分が生じて、向こうが見えるようになるのです。

*日本付近のプレートが4枚も複雑に入り込んでいるのはなぜですか?他にも何枚ものプレートが接している地域はあるのですか?

 なぜかと言われても困るのですが、むしろそういうところだからこそ、地殻の材料が集められて、日本列島が海の上に飛び出していられるのだと思います。他にそういう場所がないか、プレートの図を見て探してみてください。

 

6/6

*東京駅の水は飲めないのですか?

 うーん、一般に東京の地下水は硝酸性窒素や、アンモニア性窒素が多くて、飲めません。残念なことです。

*地下水が流れすぎても問題ないんでしょうか?

 どういう場合を想定して、問題があるかないかを議論したいのですか?

*荏原台にはなぜ多摩川が流れなかったのですか?

 理由はわかりません。たまたま、じゃないですか?

*地下水を家のエアコンなどに使ってその水を元に戻すとまたきれいな水に戻るのですか?

 どうかな。あんまりお勧めしたくないんだが。基本的には汚染にはならないと思うけれど、水のロスはけっこうありそうですね。

*どこの航空会社のサービスが一番いいですか?

 さあ、日本系の航空会社がいいんじゃないですかね。乗り比べていないのでわかりませんが。

*所沢台、狭山丘陵、田園調布台など、ところどころでぽっこり台地が残る原因は、たまたま硬い地層が集まっていたからですか?地殻変動ですか?

 いい質問ですね。たいていはたまたま削り残された、といっていいと思う(理由はあるにせよ)のですが、狭山丘陵は意味があって、立川断層により、その東側が隆起、西側が沈降する変動が、過去100万年あまり続いてきた結果だと考えられています。

*都心はアスファルトで固められ、地下水はだいぶ減ったのですか?その影響は?

 湧水の水量が減ったという話はあちこちで聞きますね。