出席カードに書き込まれた質問(11/5火曜2限)

2002後期第6回(石灰岩と炭素循環)

VTR:ジュニアスペシャル#4「奇岩にひそむ大気の謎」、地球大紀行DVD特典映像#4

 

講義内容の要約例青字…加筆、赤字…訂正)

*石灰岩とはCO2が姿を変えたものである。石灰岩を作ってきたのは生物であるが、生物のいない時代の石灰岩も発見されたので、他の方法もあるかも知れない。大気中の60倍のCO2が海には含まれている。サンゴは昼には共生藻類が光合成をし、夜にはプランクトンを食べるという生活をしており、その生命の営みから石灰岩は作り出されている。(0031029)

*地球ができてから、二酸化炭素はサンゴや光合成生物を経由し、主に石灰岩として地球内にとどめられている。そして、それらは海嶺や陸上での火山噴火によって大気に放出され、バランスを保っている。しかし、今日人間活動により、すさまじい量の二酸化炭素を大気に放出し、そのバランスをくずしている。(0031151)

45億年前の地球には100気圧分ものCO2があった。しかし、主にサンゴ虫などの働きによりCO2から石灰岩へと変化し、CO2が大幅に低下した。サンゴ礁には大規模な、大陸棚にできるものと、小規模な、海洋島にできるものがあり、純度が違う。(0031211)

 

主な質問と回答

*陸上の植物・生物VS海洋中の植物・生物でCO2吸収量対決をしたらどちらが勝ちますか?

#海の方が重要です。面積比で7:3である他に、陸域の1/3は砂漠または乾燥地帯ですし、氷に覆われたところもあるわけですから。

*中国の4分の1は石灰岩地帯だと言っていたが、中国は大陸の国なのにどうして石灰岩ができるのですか。日本には石灰岩地帯はないんですか。

*どうして桂林は石灰岩だらけの土地なのですか?昔は海の底だったのですか?

#どうして、というのは答えようがありません。そういう土地なのですから。デボン紀から石炭紀(約3億年前)は世界的に海面が高かったようで、大陸内部に石灰岩が発達したところが多いです。中国の桂林のあたりもそういう場所のひとつで、ほぼ共通する石灰岩が、日本の北上山地や飛騨山地にみられます。僕の卒論のフィールド、阿武隈山地の日立地域にも、保存は悪いのですが共通の化石を含む石灰岩があります。

*同じ石灰岩の大地でも、桂林は緑があふれる山になったのに、岩肌のままの山もありました。その違いは何ですか?

#石灰岩は、雨水に溶けるために風化によって絶壁がつくられやすい一方、岩の隙間を石灰分が沈澱してふさぐために、水持ちがよいという性質もあります。それで岩肌が露出していたり、緑に覆われたりするのだと思います。

*海中でCO2Caと結合する時のCaは、なぜ初めから海中に大量に存在していたのですか。それとも、なにかがCaを発生させているのですか?

*地球の石灰岩がそう簡単にCO2を発生させてしまうのですか?

#人為的なプロセスですか?それとも自然の風化のことですか?出そうと思えば石灰岩中の二酸化炭素の結合は酸性の条件で簡単に外れるので、いくらでも発生させることができます。こういうことは、量の問題で議論しないと意味をなさないので、諸君にワークシートを配布して、取り扱いの基礎を身につけてもらおうと試みたわけです。

*サンゴ礁でできた島は、石灰岩でできているなら、桂林のように雨で地形が溶かされていずれはなくなってしまうのですか?

#よい質問です。僕も不思議に思っているのですが、サンゴ礁の白い石灰岩だけでできた島がありますよね。約6000年前をピークとする、縄文海進の時期には海面が最大3m位上昇していますので、その時にできた石灰岩が島々を維持するのに貢献しているのかな、と考えていますが、本当のところはわかりません。ただし、南西諸島はプレートの沈み込みの影響で、過去数万年隆起傾向にありますので、理由がはっきりしています。

 

感想・意見

*サンゴが石灰岩を作っているとは知らなかった。サンゴが動物というのもいまいち信じられない。

#生きている奴を映像で見ると、小さなイソギンチャクですね。

CO2が貯蔵されている、固体となっているというイメージがしにくかったが、映像で少しはわかった。サンゴ礁がサンゴ虫という生き物でCO2を貯蔵していること、生物の未知の世界の一部を知ることができた。

#まあ、サンゴ礁はサンゴだけでなく、石灰藻や二枚貝、有孔虫、古い時代ならウミユリや層孔虫、腕足類などが作っている部分も多いのですけどね。

*コンクリートから実際に泡が出るのは面白かった。

#理屈の上では本当は出ないはずなのですが、出るのですよね。たぶん、それと関係しているのですが、古い建物ではコンクリートが酸性雨で溶けて、つららのような一種の鍾乳石ができていることが多いです。

*地球温暖化でとりあげられるのが化石燃料によるCO2増加なので、CO2の貯蔵量が石灰岩>>化石燃料というのが意外で、セメントを作る際にもCO2排出量10%を占めるとは初めて知った。

*陸上の石灰岩よりも海洋中の石灰岩の方が純度が高いというのも、陸上ではなく海洋中で生物が誕生したというのも納得できるような気がします。水中の方が気候の変動も少なく、純度の高い「何か」を形成しやすかったように感じました。

#純度の問題は、陸源の砂や泥といった砕屑粒子の供給が海洋島ではほとんどないことが重要です。けれども、生命の誕生は海水中であろうというのはその通りで、深海底の熱水噴出口などが、生命誕生の可能性のある環境として注目されていますね。

*炭素循環を考えると、自然も生物も持ちつ持たれつで長い時間をかけて形成され、進化・発展してきたんだと思いました。

#その通り。それがわかれば、我々が何を学ぶべきか、どのように自然に対するべきかがわかるはずです。

*地球についての講義を聞いていると、人間というのはおろかな生き物だと感じてしまった。

#たしかにそうでしょう。けれども、失われた自然のバランスを、自然のプロセスにまかせて長い時間をかけて回復してもらうのではなく、自分達の努力によって回復させる能力を人類は持っているものと信じます。

*サンゴ礁の下が石灰岩の積み重ねとは知りませんでした。

#サンゴ礁は石灰岩の製造工場ですね。南大東島では2000mの石灰岩がつもっているらしいです。

*温暖化が進んでも100年くらいは東京は水没しないということを聞いて安心した。

#海面上昇の問題は、地球温暖化問題の一面でしかありません。世界的な気候変動、気象災害の増加は、食料生産に影響しますし、日本の場合亜熱帯気候地域の増加は伝染病の発生につながると予想されています。さらに都市型の災害(集中豪雨による洪水など)にも影響します。安心してもらっては困ります。

*サンゴ礁はただのきれいな生物だと思っていたけれど、CO2を大量に消費してくれる、地球にとってとても重要な存在なのだと思った。

*セメントを作る時、掘ることによって、二酸化炭素が出ることを知って驚いた。建物を建てるには本当環境のことをきちんと考えた上で計画していかないと危険なんだと思った。

*二酸化炭素は火山噴火などでも出るけど、サンゴ礁などでCO2の量を制限し、地球のしくみは本当にすごいと思った。だから人間のせいで環境破壊をしているのがすごく罪悪感を感じました。

#長い時間スケールで見た場合、地球は自力で二酸化炭素濃度を調節することができます。問題なのは、人間生活に影響が大きいことです。だから、罪悪感を感じることは多分正しいことですが、それは自然に対してではなく、人類の未来や、貧しい国や、これから環境破壊による災害に直面する地域の人々に対して感じるべきなのでしょう。

*今日は偉い人たちが来ていたようで、先生の様子が微妙にいつもと違う気もしましたが、あまり興味のある話ではありませんでした。

#公開授業による資格審査だったもので、僕もさすがに上がりました。ごめんなさい。でも、君に興味がなくても、地球人にとってとても大事なことなのです。炭素循環の自然システムをきちんとわかっているならいいのですけど、そうでなければ知らずに済ませてほしくないですね。

*サンゴ礁って誰でも知っているが、生態系を支える重要な働きをしていると知っている人は多いだろうか。僕は全然知らなかった。