2001年度地学

武蔵工大・工学部 土木工学科、建築学科 専門基礎科目


3 初期地球・大気と海洋のおいたち

 われわれはどこから来たのか(第3回)

2001.4.24 地学#3 萩谷 宏


キーワード:シアノバクテリア、ストロマトライト、縞状鉄鉱

酸素のない地球

 22億年前より以前の時代、陸上で赤い酸化鉄ができない程度の酸素濃度。

 誰が酸素の多い大気をつくったか?

 …もし、タイムマシンで過去に戻ることができたなら、5億年より前の時代では、外に出たとたんにわれわれは窒息死するだろう。

 このように酸素の多い大気環境は、地球史の中で、たかだか最近10%の期間継続しているに過ぎない。過去の90%は、われわれの想像もつかないような、酸素の少ない環境が表層を覆っていた。

 もっとも、地球型惑星の大気としては、酸素が少ない、CO2-N2形の大気が普通であり、地球の大気が特殊なのだ。

初期地球の大気

 原始惑星系円盤の段階 水素とヘリウムが大半(太陽大気組成に近い)

 衝突脱ガス+マグマ・オーシャン →水蒸気+二酸化炭素の初期大気

 水蒸気→海洋の形成 

 海洋形成の重要性

 液体の水…海洋の存在条件

 海洋による二酸化炭素の固定 石灰岩の形成 …正のフィードバック

生命の起源

 酸素のほとんどない環境で、化学進化の進行

 おそらく海水中、高温環境(熱水系?) 古いタイプの細菌…好高熱性細菌

 生命の条件 → 膜による外界との隔離、代謝、自己複製能力

初期地球の生態系

 化学合成細菌 … 光合成+酸素放出するシアノバクテリアの出現

 酸素を出す生物と、酸素を使わない生物の共存 …35億年前から

地質の記録

 オーストラリアで34.6億年前の生物化石(最古)。南アフリカでもほぼ同じ年代。

 生物起源の炭素はグリーンランドの38−39億年前の地層から。

 縞状鉄鉱の形成年代と酸素の放出との関係

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(まとめ)

 酸素の多い大気は光合成生物が長い時間をかけて形成してきた。地球史の半分はシアノバクテリア、その後は、特に陸上植物の発展により、石炭形成と平行して酸素濃度が増加。

 石炭や石油は、それぞれ陸上植物やプランクトンの遺骸から地下で形成。

 縞状鉄鉱も、間接的に生物活動の産物。現在採掘している鉄鉱石の90%以上が20億年より昔の海底に形成された縞状鉄鉱。建築材の鉄骨も、鉄筋も、みな生物の産物。

 コンクリートに使うセメントも、古生代のサンゴ礁で形成された石灰岩を原料にしている。

 ・・・つまり、われわれの現代文明も、日々の生活も、あるいは生存そのものが、過去の生物活動の産物で成り立っている。

 余談:地球上の現在生きている生物体をすべて燃やしても、二酸化炭素濃度が数倍、酸素濃度はコンマ以下しか変わらない。化石燃料を燃やすことは、炭素循環に新たなインプットをもたらしている。→図示

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標本:

 アエンデ隕石:太陽系最古の物質(CAI)を含む。

 縞状鉄鉱:38億年前・グリーンランド。 手に持ってみよう。磁鉄鉱を含むので密度大。重い。

 ストロマトライト:ハメリンプール、現世のもの。拡大すると、層構造がわかる。粗粒の生物片でできている…VTRで紹介した形成モデルに問題あり。

VTR:

NHKジュニアスペシャル#3(地球大紀行#3)「残されていた原始の海」VTR1, VTR2

参考書:

・生命と地球の共進化 川上紳一著 NHKブックス 
・大気のおいたち 秋山雅彦著 青木書店1986 \1400


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