各回課題の解答例 2010

−正解はひとつではありません。これ以外にも正解はいくらでもありえます。あくまでも参考のために。丸暗記はおすすめしません。

 

*宇宙を観測するのに様々な電磁波を用いる意味を、簡潔にまとめてください。

 物体が放射する電磁波は、その温度により波長と強度のパターン(スペクトル)が異なる。宇宙において、低温のガスの分布や運動を観測するには電波の観測が適しており、ブラックホールの観測には、ブラックホールに引き込まれる高温のガスが発するX線の観測が適している。このように、宇宙に存在する様々な天体やその運動を観測するには、用途に応じた電磁波の波長の選び方が重要である。

(我々の目は太陽が放射する電磁波のうち、もっとも強度の高い領域を感知するようにつくられている。太陽は平均的な主系列星であるので、多くの恒星を観察するのに、我々の目は適しているといえる。)

 

*宇宙を調べることは、地球や太陽系を知る上でどのようなメリットがあるのか、簡潔に説明してください。

 太陽系や地球は宇宙の一部であるので、宇宙(他の天体)を調べることは太陽系や地球の普遍性や特殊性を判断する上で役に立つし、さまざまな成長段階の天体を観測することで、太陽系や地球の歴史を理解し、未来を予測することができる。

 

*惑星上に生命が誕生し進化する条件はどのようなものか、簡潔にまとめてください。

 惑星の材料がどこでもほぼ同じであり、形成過程も同一であると仮定する。恒星からの距離が、表面で液体の水を維持できる程度であり、大気や水を表面に保持できる充分な重力が生じるだけの質量を惑星が持っていることが必要である。また、恒星の寿命が生命の進化に必要なだけの長さを持っている必要があるので、恒星のサイズは太陽と同じくらいが望ましい。

 

*月を調べることは地球に住む我々にとってどんな価値があるのか、簡潔に説明してください。

月は地球に最も近い天体であり、地球の起源や初期進化についての情報を与えてくれる存在である。また、月面探査の技術は、将来の惑星探査や、深宇宙探査の基礎となるであろう。人類は、有人月面探査に挑戦することで、宇宙の暗闇の中に浮かぶ地球という惑星を初めて客観的に外から眺めることになった。それが「宇宙船地球号」の認識を生み出したといえる。

 

*殻や骨格を持つ生物の出現は、生物界や地球表層にどのような変化をもたらしたのか、簡潔にまとめてください。

 (生物界)硬組織を持つことで生物種の多様性が増加し、食う食われる関係の生存競争を激化させ、進化を加速したと考えられる。生物礁が出現し、生態系は多様性を増した。(地球表層)生物がリン酸カルシウムや炭酸カルシウムを大量に消費することとなり、これらの成分が海洋から除去され、あるいは偏在するようになった。生物礁が大量に形成されたことで、大気中の二酸化炭素濃度が低下し、オルドヴィス紀−シルル紀の氷期を引き起こした可能性がある。

 

*化石燃料を消費することは、どうして地球温暖化につながるのか、炭素循環のしくみから説明せよ。

 地球上に存在する炭素は、主に大気、海洋、生物圏の間を循環していると考えられる。その量は、自然状態において数十年〜数百年のスケールでは全体としてはほとんど変化しないと考えられる。しかし、化石燃料を消費することは、過去に地下に蓄積した炭素をあらたに物質循環の中に組み入れることになり、炭素の流通量の総量を大きくすることにつながる。特に、埋蔵されていた炭素が二酸化炭素(やメタン)として大気中に放出されることは、大気の温室効果を高め、急速な地球温暖化につながるものとして危惧されている。

 

*本日の講義内容(DVD「恐竜再生」含む)の要点を簡潔に(3行程度の文章で)まとめてください。(箇条書き不可)

 恐竜は大量絶滅後の三畳紀に出現した爬虫類の1グループであり、直立し二足歩行が可能な敏捷な骨格をもつことで繁栄した。ジュラ紀には竜脚類や大型肉食恐竜が進化・発展し、白亜紀にかけて様々な種類の恐竜が現れ、他の爬虫類のグループに属する翼竜や首長竜、魚竜などとともに海陸空の生態系を支配した。しかし中生代末には多くのグループが絶滅・衰退し、ユカタン半島に落下した小惑星により引き起こされた大量絶滅事件にとどめを刺された。

 

*「生物の進化は、隕石衝突による大量絶滅など、偶然に支配されている」という考えは正しいか。

 隕石衝突のタイミングはランダムに起きると考えてもよいが、そのような環境激変に対して生き残れるかどうかは偶然ではなく、その時点で生き残る必然性を持った体制や生活様式をもった生物のみが生き残っている。その点で、進化は偶然に支配されているとは言い切れない。

(そもそも、進化には理由がある、と考えることで進化生物学は発展してきたわけで、すべて偶然だとしてしまったら、「聖書に書いてあることを信じなさい」という時代に逆戻りになりそうな気がします。これは極論だとしても。科学の原点に関わることです。)

 

*地球に火山活動がまったくなくなったと仮定すると、現在の地球とくらべてどのような変化が予想されるか。

 火山ガスを通じて放出される二酸化炭素の供給がなくなり、長期的には表面が寒冷化する。また、火山活動以外の方法で地球内部の熱を放出するために、プレートの移動速度が速くなり、地下の温度勾配(地温勾配)が上昇するだろう。火山島がなくなり、珊瑚礁の発達がおさえられる。

 

*地震のない地球はどのような状態になるか。

 地震がなくなるためには、地球が冷え切ってしまってマントル対流が存在せず、火山活動もない状態が想定される。その場合、大陸移動が停止したり、沈み込みや海洋底拡大がおきないだけでなく、大気・海洋と地球内部が相互作用を起こさず、温室効果ガスのあらたな供給もなく、長期的に地球表面は寒冷化し、地表の平坦化が進む。もう一つの可能性は、地球の表層部が非常な高温になった場合に、岩石が軟らかくなり、地震活動が生じない可能性がある。その場合は海洋は存在せず、生物も絶滅する。

 

*金属元素が濃集する過程で重要なものは何か。

 マグマの分化の過程で、特定の場所に特定の金属元素が濃集すること。あるいは、硫化水素イオンや塩化物イオンを含む、高温の水に金属元素が溶解すること。それが運ばれ、集められ、ある一定の条件で沈澱を起こすこと。その沈澱を起こした領域が地質学的に保存されること。すなわち、材料としてのマグマ/岩石、運び屋としての水/流体の存在、一定の温度・pHEHなど、沈澱を起こしうる条件。その3つがそろったときに、濃集が起きる。

 

*砂の性質を決める条件についてまとめてください

 砂の材料となる岩石の種類。砂を構成する鉱物や粒子の形成条件、特に風化のしくみ、輸送媒体、経過年数など。最後に、砂のたまる場所の性質。供給源から近いか、遠いか。水辺か、砂丘か、沿岸流や風の方向、強さ、安定性など。さらには珊瑚礁の砂のように生物が関与する粒子の場合は、その生息環境や破壊・濃集のメカニズムも重要である。

 

*諸君と鉱物の関係について考察せよ。

 人間の体内にある骨や歯は鉱物であり、生命活動の維持に大きく関わっている。鉱物は金属資源や非金属資源として、大量に利用されているほか、水晶発振子やレーザー光源などのように、それ自体の性質を利用した電子部品も数多くつくられている。コンクリートや鉄、ガラスなどの原料もすべて天然の鉱物であり、都市そのものが鉱物からつくられているとも言いうる。(諸さんの好物は鉱物である、というしゃれの効いた解答は上出来だが、試験で書いたら減点する。少なくとも考察がなくては評価できない。)

 

*都市ができることによって、その地域の水循環にはどのような変化が起きると考えられるか、説明してください。

 降水−地下水−河川水−海洋−蒸発といった、自然の水循環に対して、局地的に水循環のバイパスをつくることになる。都市の水の多くは上流部でのダムから取水し、産業活動や生活に利用された後、最終的に自然河川に放流されることになり、自然の水循環に汚染や水量変化など、大きな影響を与えることになる。どんなに水処理をうまくしたとしても、もとの自然の水循環システムと同じ清浄さを保つことはできないし、都市の規模によっては自然の浄化作用を超えて汚染の拡大を引き起こす。