野外実習の安全

 2001.6.25


 露頭観察や化石採集などの、地学分野の野外実習は、学習の上で非常に効果的であるが、実施には安全に細心の注意を払い、事故を未然に防ぎ、また不測の事態に対しても、適切な処置を講じることで、より内容を充実したものにすることができる。

(計画)野外実習は、実習に参加する児童・生徒の体力や状況を判断し、無理のないような計画を立てたい。また、引率者の選択や人数配分にも注意する必要がある。野外実習を行うには、できるだけ児童・生徒10人につき1人、できれば5人に1人になるよう、引率者を確保したい。引率者と児童・生徒の人数比を適切に保つことは、事故の可能性を減らすだけでなく、引率者の疲労を減らし、より充実した実習とするためにも役立つ。

(下見)現地の下見は必要である。場所や季節にもよるが、できれば一ヶ月くらい前には現地の下見をして、安全な実習場所の選定をしておきたい。野外実習の場所以外にも、周辺の道路や地形の状況、河川の増水時や、落石、土砂崩れなどの可能性を含め、起こりうる事故や危険を想定して観察しておく。参加者の体力や学年などを考え、ルートや日程を検討する。昆虫やマムシなどの生息状況も確認する。携帯電話の通話状況や、最寄りの診療所、病院を把握しておくことが望ましい。道路状況、交通条件なども重要である。日没時間、気温、海岸では潮位変化の範囲を押さえ、悪天時の条件も確認しておく。

(実施前)現地に行く前に、実習用具の確認をする。例えば古い木製の柄のハンマーでは、頭の部分がはずれる場合がある。頭のつぶれたたがねも、鉄片が飛ぶ危険があるので使用しない。ヘルメットは防災用に常備してあるものを借り出すこともできる。学校教育災害保険はもちろん、保険会社のレクリエーション保険などに加入しておくことが望ましい。あらかじめ絆創膏や傷薬、酔い止め、胃腸薬などの用意をする。

(日程)当日の日程は、現地での移動時間や活動時間に余裕をもつように配慮して設定する。急がせることは注意力の低下につながる。参加者に対し、当日の日程と準備について、十分な説明と指導をする。持ち物に対する指示を徹底することも、事故の防止には重要である。公共交通機関の時刻はもちろん、日没や潮の干満の時間も必要に応じて確認する。

(実施当日)当日は、計画日程に固執せずに、天候や条件の変化に対応して、無理のないようにする。  ハンマーやたがねの扱いに慣れていないと、自分の指をたたいたり、岩石の破片が飛び散って、目に入るなどの危険が増大する。できるだけ硬い岩石では保護めがねを着用するようにしたい。また、ハンマーを振る前に、周囲に人がいないことを確認することを徹底させる。岩くずを道路に放置すると、パンク原因になるだけでなく、はじかれてけがをする原因にもなる。
 河川の場合、上流域の集中豪雨や、ダムの放水による増水の可能性を考えなくてはならない。また、崩壊や土砂崩れの予兆を見落とさずに、早めに避難するなど、適切な対処が必要である。

(終了後) 同じ場所で野外実習を行う可能性がある場合は、事前配付資料とともに、当日の記録、注意点などを文書にして残しておくことが望ましい。


石のたましい

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