珍しい化石(骨)を発見したときに

 


骨の化石を発見したときに、何をするか。

 骨の化石であるかどうか、判断することが難しい場合も多いです。骨は骨細胞が入っていた穴がたくさんあって、断面や破断面を見ると、スポンジ状に見えることが多いです。石灰分が置換されて珪化していたり、炭のように見える場合もあります。一方、歯の化石では、非常になめらかな表面がよく保存されている場合もあり、化石としての残り方はさまざまです。

1.産状の記録などを取る。写真やスケッチを。

2.写真は、掘り出したところのアップよりも、周囲の状況がわかるようなものを。

3.専門家,専門機関に相談する。

 どうしてか、というと、

1)産状が重要

 化石がどのような状態で、どのようにどの地層に入っていたか。また、周囲 の地層の状況はどうであったか、ということが大切です。

 有名な明石原人の化石は、転石として発見されました。そのため、産出層準 についての疑念がつきまといました。原人の時代ではなく、もっと新しい時代 の化石ではないか、という意見が強かったのです。  化石に周囲の土が付いていれば、あるいはどこにあったものか判断できるか もしれません。付着生物の化石などから、埋没までの環境が読みとれることも あります。掘り出してしまうこと、きれいに洗ってしまうことは、せっかくの 情報を失ってしまう場合もあるのです。

 さらに、部分化石が出たときに、他の部分、運が良ければ全身骨格が出る可 能性を考えます。そのときに、どのような姿勢で埋まっていたか、複数であれ ばどのように配列していたか、というのは重要な情報です。

2)保存の問題

 化石によっては乾燥するともろくなってしまうものがあります。掘り出すこ とで、壊れてしまう場合もあるので、実際の発掘では樹脂をしみこませたり、 石膏で固めた上で取り出すなど、慎重に扱う必要があります。

 逆に、放置してはいけない場合もあります。石灰質のものは風雨にさらされ るともろくなりますので、露頭に現れている場合、早急に処置した方がいいで す。川岸や、海岸の場合、浸食により失われてしまうこともあります。そのあ たりは現場で判断しなくてはいけません。化石の大部分が露出しているなら、 保存のためには取りだしてしまった方がいいでしょう。その時に産状をきちん と記録に残すことが重要です。元あった位置に戻せるように、周囲の状況を含 めて記録します。

3)専門家に連絡

 化石の処理は、経験を積んだ専門家に任せるのが一番です。また、化石は鑑 定作業というか、科学的検討を経て、種類やその意義が決定されることで価値 が生じます。例えば運良く恐竜の化石を拾っても、死蔵してしまうと学術的価 値はないのです。専門家が鑑定し、論文に記載して、初めて認められ、価値が 出るのです。大げさにいえば自分の発見した化石が人類の資産に加えられるこ と、それが学術論文に記載・発表されることなのです。

 すでにたくさん見つかっている化石であれば、残念ながら発見者としての意 義が薄れてしまうかもしれません。けれども、珍しいものか、初めての発見か どうかというのは、やはり専門家の判断が必要です。見てもらうことは大事な ことです。

 実際には、出た化石を何でも専門家に持ち込むのは困るのですが、よくわか らないものは、確率は低くても新発見の可能性があります。本当の専門家に見 てもらう前に、ある程度訓練を受けた人、学校の先生や、僕のような人間に見 せて、持ち込むべきものかどうか判断してもらうのは良いことだと思います。


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