原始太陽系・初期地球の水の起源
1)酸素は重い恒星内部で作られ、それが放出されて、水素と結びつき、水ができる。
2)宇宙空間にそのようにしてできた水分子はたくさんある。
3)水分子の形でなくても、有機物は高温条件で分解し、水と二酸化炭素になるだろう
4)地球を作った微惑星の材料(一部)と思われる隕石には、水酸基の形で水を含む含水鉱物がたくさん含まれていて、これも高温や衝撃で分解し、水分子を放出する。
5)地球の水は、微惑星が持っていた含水鉱物や水(氷)がもとになっている。
地球の水は、地球を形成する材料となった微惑星の中に、水酸基の形で水を持つ含水鉱物が含まれていたり、もともと氷の形で含まれていたものが、衝突合体で原始地球が成長していく過程で放出され、地球を取りまく原始大気となったものだと考えられています。
しかし、もっとさかのぼって、どの時点で水が生まれたか、またその材料がどこでつくられたかを考えてみましょう。
地球上に水があるということは、水素や酸素の原子が結びついているわけですが、 それらの原子は、地球をつくる他の元素と同じく、太陽系の元になった原始太陽系星雲や、 原始惑星系円盤のなかにあったわけです。
太陽系の元素存在度(松尾、1989)
水素は、ヘリウムとともに、宇宙の最初につくられ、どこにでもある元素ですが、 酸素は、重い恒星内部の核融合により作られます。そして、重い星が終末を迎えて、 白色矮星になったり、超新星爆発で吹き飛んでしまったときに、 周囲の宇宙空間に放出されたものです。
低温の宇宙空間で、そのような酸素原子があると、紫外線などのエネルギーを得て、
酸素は水素や炭素と化合物を作り、水もあるでしょうが、ホルムアルデヒドや、
メチルアルコールなどの単純な有機化合物もつくられます。酸素とともに、
窒素や炭素も作られていて、特に炭素は量が多いので、
酸素の結びつく対象になりやすいと考えられます。
そうしてできた有機物は、星間物質と呼ばれるガスやチリの一部になります。
酸素原子は反応性が高いので、その他にも、マグネシウムや珪素、鉄など、
さまざまな元素と結びつき、酸化物を作ったことでしょう。ただし、
これらは量的には炭素や窒素に比べると少なくなります。
低温のガスが、渦を巻いてあつまり、自分の重力で収縮を始めて、中心に太陽ができて、
その周囲には無数の微惑星が生まれました。このとき、
珪素やマグネシウム、鉄、カルシウムなどの金属元素と結びついた酸素は、
結合が強いので、微惑星が生まれる前の高温状態や、微惑星ができて、
衝突合体をすることで微惑星表面が高温のマグマ・オーシャンになっても、
安定な結合を続けることができます。ですから、かんらん石や輝石などの金属酸化物の珪酸塩鉱物がつくられ、
それらは微惑星の破片である隕石の大半を占めています。
しかし、例えば有機物を作っていたような酸素は、結びつきが弱く、
およそ1000度以上の高温では分解して、二酸化炭素と水になってしまいます。
したがって、マグマ・オーシャンの時代の初期地球では、豊富な有機物、
あるいは複雑な酸素を含んだ化合物があったとしても、高温で分解され、
二酸化炭素と水蒸気からなる大気が、厚く表面を覆っていただろうと考えられます。
というわけで、水として、もともと宇宙空間に存在していた量がそれほど多くなかったとしても、 材料がどのようなものであったにせよ、有機物がたくさんあったなら、地球形成時に表面が高温になることで、 二酸化炭素と水蒸気の大気ができてしまう、ということです。
水酸基の形で含水鉱物に含まれていた水についても、高温あるいは衝撃による分解されやすさの点で、同様のことが言えると思います。