いわき化石見学旅行98・記録

 年末の12/25,26に、いわき市で中2〜高1の生徒22人と、恒例の化石見学
旅行に行ってきました。8年間で8回目です。
 今回は、メインの安生先生が体調不良で不参加、その代わり?、科博の遠藤
さんに参加していただきました。また、OBの大学1年生が2人、手伝いに来
てくれました。
 藤沢市科学少年団のOB団の存在をうらやましく思っていたのですが、やっ
とこちらもOBが育つまでになりました。感慨深いです。

 8時集合、8時20分出発。首都高速から常磐道へ。行きのバスの中では、例に
よって車窓から見える風景を解説、江戸時代の水運・物資輸送の話、利根川と
鬼怒川の流路変更の話など。よく晴れた朝で、たき火の煙が見事に上空50mほど
のところに滞留していて、逆転層の話など。気象研究所の鉄塔を見て、高層気
象観測の簡単な話、遠藤さんから地磁気観測所と常磐線の電化の話(交直両用
電車)、東大附属農場のサラブレッド生産の話など。また、水戸の成り立ち、
棚倉構造線、日立鉱山の話、逆転層に関連して大煙突の話、常磐炭田、ボタ山
の再利用の宅地開発の話、戊辰戦争、勿来の地名の由来。大和朝廷の勢力伸張
の歴史。このあたりは例年のゲストのお話から盗用していたりして。

 11時過ぎにいわき市石炭化石館に到着。今年は遠藤先生がいらっしゃるので、
解説も本格的。入り口すぐのクジラ骨格でしばらく解説。オオナマケモノの骨
格でも、新世界の不思議な巨大哺乳類と、最終氷期以降の人類の移動による絶
滅の話など。マメンチサウルスや、ゾウの骨格、サメ、プロトプテルム、あま
りに材料が豊富で、話題が尽きない。
 石炭関係の展示を見て、戦後復興期の民俗の話など。さらに時間が余ったの
で、外の岩石園で変成岩や花崗岩・片麻岩を観察し、ペグマタイトの話。意外
と鉱物の話に高1が興味を示す。宝石はどういうところで採れるのか、など。

 時間を見て、14時石炭化石館出発。14時30分、好間町大利の夾炭層露頭へ。
近くのレストランの営業時間のすきまを利用して、駐車場を借りる。いまでは
数少ない石炭の露頭を見せて、形成メカニズム(海進・海退のサイクルではな
く、デルタ成であるという最近の解釈)を解説しようとするが、石炭の間に琥
珀が見つかることを教えたために、みな露頭に貼りついてしまう。意外にたく
さんみつかる。また、炭層下盤の粘土層から植物化石多数。
 15時過ぎに終了。レストランのご主人が、八丈島の玄武岩質の紡錘状火山弾
や、裏の山で拾った珪化木などを見せてくださる。下見の時にお話しして、お
願いしておいたのがよかった。

 今回は欲張らず、それから宿に直行。四倉のスーパーで夕食の弁当を調達…
これは宿代を浮かせる妙案。(1500円ほど安くなる。)
 夕食、風呂のあと、20時から遠藤先生の特別講義。中高生相手だからといっ
てレベルを下げる必要はない、ということで、脊椎動物の進化史に関係して、
前肢からヒレやつばさへの変化、相同のこと、進化学的収斂の話を、図表とO
HPを使用して、みっちりと話していただく。石炭化石館でクジラ、鳥類、ク
ビナガリュウや魚竜の標本を見た後なので、非常にわかりやすい。質問も多く
て、終わった後も高校生が部屋に来て、0時半まで粘っていた。
 さらに22時半から、希望者だけ外に出て、天体観察。ちょっと寒いがいつも
よりは気温が高い。星が多くて、暗目の流星も目に入る。ここでしし座群の観
測をすればよかったね、と話し合う。都会育ちの生徒には、暗い夜空も新鮮に
映ったことだろう。

 朝7時、宿近くで朝飯前の化石採集。OBと生徒達は6時台にもう出ている。
「先生、遅いよ」といじめられる。けっ、引率は疲れるんだい。
 8時に朝食、9時からアンモナイトセンターの見学と体験発掘。ここも常連。
内部の発掘もだいぶ進んでいるようだ。新しい大きなアンモナイトがいくつか
増えている。展示してある異常巻アンモナイトなど、過去の発掘品のケースに
生徒が群がる。
 体験発掘は通常は毎月第2土曜と第4日曜の午前9時、午後1時(当日申し
込み)だが、団体は事前に申し込めば対応してもらえる。館員の鈴木さん(正
さんとは別人)と、館長さんが生徒を見てくださる。サメの歯が2本。前回は
42本(ただし、70人で)出たのだが。アンモナイトが数個。小さいが完全なも
のが出る。トリゴニアの破片は目立つが、あまり出ない。イノセラムスは比較
的よく採れる。今回はあまり採れないので、生徒は大事に化石を包んで持ち帰
る。よいことだ。

 宿に帰って昼食。近くの工事現場に宿の主人が電話を入れて、採集の許可を
取ってくださる。ありがたく午後からそこで採集。しかし、初心者はこつが飲
み込めていないのか、やはり期待したようには採れない。OBは3個もアンモ
ナイトを出しているのに。
 海竜の里に寄り、組織発掘した露頭を見学。若干の琥珀を採集。16時、帰路
につく。車内のビデオでジュニアスペシャルの#10「魚たちの上陸作戦」#11
「大空への挑戦」を流すが、疲れた生徒のほとんどが睡眠時間。19時に学校着。
解散。

 天気に恵まれ、充実した旅行でした。遠藤さんには無理を言って参加してい
ただいたのですが、生徒には非常に刺激になったことと思います。休み明けの
レポートが楽しみです。たくさんの方の協力があって成立している行事である
ことを再確認しました。地元でも、学校名をいうと「ああ、あの。」と言われ
るようになりました。僕はこれが最後のつもりですが、長く続けて欲しい気が
します。