イスアの38億年前の地層と岩石

南西グリーンランドの内陸部、氷床につきだした露岩地帯が、最古の海の地層が見られることで知られる、イスア表成岩帯の分布するところです。

地球史のごく早い時期に、地球の表面に液体の水としての海が広く存在していたことを示すものとして、重要な位置を占めています。

最近、この地域の岩石の中から、生物起源とみられる同位体組成を持つ炭質物が検出され、生命の起源の問題でもホットな話題となっています。


イスアの38億年前の海洋地殻と堆積物
 イスア地域東部の枕状溶岩と縞状鉄鉱の層序の繰り返しのようす
 画面中央に玄武岩質枕状溶岩があり、両側は縞状鉄鉱層。画面左が堆積時の上位。右上の境界は断層、左下は整合的。
 よく見ると枕状構造や、縞状鉄鉱の細かいチャートと鉄鉱物の互層がわかる。
イスアの38億年前の海洋地殻と堆積物2
 イスア地域東部の枕状溶岩と縞状鉄鉱の層序の繰り返しのようす
 画面中央に玄武岩質枕状溶岩があり、右側は縞状鉄鉱層。 枕状構造(ほぼ縦断面)がよくわかる。
イスアの38億年前の海洋地殻と堆積物3
 縞状鉄鉱に貫入する玄武岩質シル
 イスア東部の縞状鉄鉱−チャート層中に、玄武岩質マグマが層理に平行に入り込んで固結している。縞状鉄鉱の堆積と火山活動(off ridge volcanism??)がほぼ同時に起こっていたことを示している。下側の境界が大きくたわんでいることから、貫入した時点で縞状鉄鉱が未固結であった可能性がある。
イスアの38億年前の海洋地殻と堆積物4
conglomerate lake723北方。礫岩。現在はざくろ石黒雲母片岩であり、石英質の礫も変形している。
 堆積時の配列髄w理面がわかる。
 礫径は平均5cmほど。
イスア地域の試料採取地点
sampling site イスア地域の38億年前の地層の分布(黄緑色)と、サンプル採取地点
 画面左側は内陸氷床に覆われている部分。氷河に削られたなだらかな地形と湖が散在する地域。 中央部にはアミツォク片麻岩がドーム状に表れている。
イスア表成岩とアミツォク片麻岩の境界(北側)
boundary outcrop1 イスア地域の38億年前の地層は、約34-38億年前に固結した花崗岩類である、 アミツォク片麻岩と接している
 モレーンに覆われて、その境界はここでは露頭で観察できないが、植生の違いで表成岩とアミツォク片麻岩の境界が明瞭に表れている。画面右の黒い岩石が細長く突出した部分は、 約35億年前に貫入したアメラリク岩脈群の一部。当時の”大陸”の証拠
イスア表成岩とアミツォク片麻岩の境界(南側)
boundary outcrop 2 イスア地域の38億年前の地層の最下部とされる、角閃片岩(A1)とアミツォク片麻岩の境界の露頭。 両者は不連続であり、片麻岩の縞状構造が境界と斜交しているのがわかる。不整合の証拠は見つからなかった。この50mほど南側には境界に平行な構造方向を持つマイロナイトが見られる


炭素循環の証拠−炭酸塩岩
carbonate island イスア表成岩には、炭酸塩−カルクシリケイト岩(炭酸塩+珪酸塩)が頻繁にみられる。 写真はLake678に浮かぶ小島に露出する層状の炭酸塩岩起源の変成岩。地球の表層環境をコントロールする海洋−岩石圏での炭素循環が、当時すでに機能していたことを示すもの。 海洋に溶け込んだ二酸化炭素は炭酸塩岩として固定され、地表風化や変成作用でまた大気に戻る。


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