海洋の存在と花崗岩


 黒雲母花崗岩(福島県・本宮石)

 花崗岩は、玄武岩質マグマ(地球型惑星共通の基本的なマグマ)の結晶分化 では量的にほとんど作れないのです。

 現在の安山岩質マグマの分布が、沈み込み帯とほとんど完全に一致すること にみるように、このようなシリカ(SiO2)の多いマグマをつくるには、プレー トの沈み込みによる上部マントルへの水の供給が重要だと考えられています。

 水のきわめて少ないマグマの結晶分化は、グリーンランド東部に露出する、 スケアガード貫入岩体で詳しく調べられていますが、SiO2が増加する方向では なく、Fe/Mg比が増加する(鉄の割合が大きくなる)方向への結晶分化が起きま す。従って、これではSiO2の多い花崗岩はつくれない。

 花崗岩マグマの成因は、沈み込むスラブの融解、沈み込まれる側の下部地殻 の融解、すでにある花崗岩・変成岩などの融解、堆積物の融解などが主に考え られます。時代や場所により、さまざまですが、ある程度その起源は推定でき るので、I-type, M-type, A-type, S-typeなどの分類がなされます。

 沈み込むスラブの含水鉱物のかたちで地球内部に持ちこまれる水が、造岩鉱物 のSi-Oのネットワークを切るはたらきをして、岩石の融点を下げ、効率よくマグマ を生産します。

 沈み込むプレート(スラブ)が、含水鉱物をつくるためには、安定した海洋 が存在していることが重要です。海底での熱水変質により、海洋地殻には、平 均で1%程度の水が含まれます。もし、海洋がなければ、この熱水変質が起き ず、従ってマントル内に水が持ち込まれることもほとんどなくなります。した がって、地球で見られるような効率的な花崗岩の生産はできないということに なります。

 雑文:花崗岩問題の本質とは



石からわかること

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