環境問題に対して考えたこと


 人間の産業活動は確かに地球環境に影響を及ぼしていますが、その影響を最 も受けることになるのは、生態系の最上位者でもある人間自身です。現在の急速な温暖化の進行にしても、 その進行速度はかなり速いものですが、変動幅自体は過去の表層環境変動の揺らぎの中に入るレベルの問題で、 特に破滅的なものとはいえません。

 ローカルな環境問題から、グローバルな地球環境問題へと一般の関心が集まるようになり、 それはそれでよいことだと思いますが、いっぽうでは感情的な論調も目につきます。 蓄積性のあることが地球環境問題の特質でもあるので、未来を見据えて、 冷静に、賢い方策を選ぶことが求められています。

 「地球を守れ」などというスローガンは、ある意味では人間の無知と身勝手さの象徴のようなもので、 人類が引き起こしている環境問題は、他ならぬ人類自身に最大の影響を及ぼすのかもしれません。  極端なことをいえば、人類が滅びても(滅ぼすのは簡単ではありませんが)、 地球生態系全体から見れば、ちっとも困らないだろうと思うわけです。 また、1万年以上の時間スケールで見れば、絶滅は特別なことではなく、 絶滅があるから新たな生物種に発展の機会が訪れてきたわけであり、 直接間接に人類もその恩恵を被っています。
 固体地球や、生態系、物質循環システムには、それらなりの論理があり、 それは人間の都合とはちがう時間・空間スケールで展開されている。 それをまず認識することが大事なのではないかと思います。

 現在の地球のバランスを保つはたらきや、過去の地球に起こったことをよく知ることは、 人類が自分の住む世界をよく知り、それを活かしてうまくやっていくために、 どうしても必要なことではないでしょうか。 地球の理屈や論理を知ることの重要性は、そこにあるのではないかと思います。


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1998.8.2/2001.1.3 H.Hagiya