光合成生物の発展と大気組成の変化


 地球には太陽からのさまざまな波長の電磁波が届くが、そのうち紫外線はDNAをこわすはたらきがあり、生命にとって有害な存在である。紫外線は海水によってさえぎることができるので、生命の誕生と初期の進化は海水中で進行した。
 やがて、太陽の光を利用して光合成をするラン細菌が出現し、海水中に酸素を放出した。放出された酸素は、海水中の鉄分と結びつき、海底に沈殿することで、大量の縞状鉄鉱がつくられた。現在、鉄鉱石として採掘されるのは、ほとんどが39−16億年前に形成された縞状鉄鉱である。特に27−20億年前には、大規模な縞状鉄鉱層が世界各地に形成された。
 縞状鉄鉱の形成が終了し、大気や海洋中に酸素が蓄積されるようになって、現在の酸素の多い大気の基礎がつくられた。約22億年前には、海中だけでなく大気中にも酸素が供給され、陸上に酸化鉄が形成された証拠が見つかっている。

 海水中の酸素が増えることで、その酸素を呼吸に利用する生物が発展した。酸素を用いる呼吸はエネルギー効率が高く、より大型で複雑な構造の細胞をもつ、真核生物が出現するきっかけとなった。さらに、酸素の増加とともに多細胞生物が進化した。およそ5億6000万年前の地層からは、さまざまな形態の多細胞生物の化石が発見されている。

 大気や海水中の酸素が増加する一方、大気中の二酸化炭素の濃度は石灰岩の形成や生物の光合成活動による消費で低下し、そのため地表温度も徐々に低下したと考えられる。氷河記録は27億年前の南アフリカのものが最古であるが、24−21億年前には、大規模な氷床が発達した記録が北アメリカに残されている。8-6億年前の氷期は、生物進化の上でも大きな影響を与えたことが推定されている。

 2001.1.22 H.Hagiya


地球史

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