流星群と彗星Q&A −その1
> 獅子座流星群の説明をしていた番組のCGでは、彗星がまき散らした塵には岩石
>のような大きさのものもありました。
本当ですか?。どの番組かわかりますか?。
もし、そうだとすると、ずいぶん不正確なイメージを与えてしまいますね。 僕の知る限り、彗星起源の流星群に伴って落下した隕石、すなわち彗星本体か らきた隕石というのは、知られていないと思います。
彗星に含まれて流星のもとになる数mmサイズの「塵」と、地球に見るような 岩石とは、できかたが違うのです。塵は、太陽系ができたときのガスから、直 接結晶化した鉱物として、氷やドライアイスと同時に太陽系の外側でできて、 それらが一緒になって彗星の中に含まれているのだと考えられています。
しかし、ごつごつした岩石というのは、結晶化した鉱物の塵ばかりがたくさ ん集まって、押し縮められ、いったん固化するプロセスが必要です。場合によ っては、いったん融けたものもある。地球軌道付近では、岩石の微惑星がたく さんできたと考えられますが、彗星のもとができたような外側の軌道では氷が 混じってしまって無理だったのでしょう。
彗星のような、氷とドライアイスの塊では、岩石は絶対にできません。汚れ た雪だるまの中で、氷をよけて塵だけが集合し固まることはできませんから。 ですから、地球で見るような岩石をCGで出すのはおかしいと思います。
もっとも、太陽に近づくことで、蒸発が進み、表面が蒸発しにくい塵で覆わ れてしまうことはよくあります。それで、彗星の核を撮影すると、塵で覆われ て蒸発が少ない部分と、蒸発が進行する部分のむらがあったり、あるいは塵の カバーが剥がれて、特定の方向に一気に蒸発が進行する「ジェット」が観測さ れたりします。この塵の「皮」の部分でしたら、岩石に見えなくもないかもし れませんが。でもたぶん、すごくもろいから、やっぱり岩石はまずいなあ。
もし、彗星から来たとわかる隕石があれば、現在、地球の水の起源が彗星が もたらしたものではないか、という議論が沸騰しているので、それに決着をつ けられるので重要です。本当に、流星になって蒸発してしまうのが惜しいので す。彗星ができたときに同時にできたと考えられる、あの砂つぶを手に入れる ことができれば、論争に終止符を打てるのに。
>|「塵」といっても中にはキロメートル単位の大きさのものもある
>
> との発言もありますが、テレビはウソをついてたんでしょうか? (^^;)
文脈をきちんと見ないとわかりませんが、彗星の本体のことを指しているの
か、あるいは彗星の核が分裂するようなことをイメージしているのか、そうい
う話ではないのでしょうか。
あるいは、小惑星とごっちゃの話をしているのかな?。
こういう話に限りませんが、科学番組をつくるときに、正しいイメージを伝
えるために、専門家と制作者が協力して作業しないと、よいものができないの
です。CGの制作はもちろんですが、説明映像の選び方ひとつで、話の信頼度
が変わってきます。残念ながら、それがうまくいっていないのではないか、と
思われる場合があります。
僕はいま、そういう橋渡しのような仕事をしています。