1997.4.10実施 一覧
introduction
化学を学ぶ意義
我々のまわりの物質の世界を知ること。
そこには物質の種類によって、特有のきまりや法則が支配している。それを学ぶことは自然科学の基礎である。
建物、岩石、大気、海水、宇宙の天体。それぞれ何でできているか考えてみよう。我々自身のからだは何でできているだろう。
余談:学問の発達の歴史、ニュートンの錬金術。
化学を学ぶと何の役に立つのか。
食品、生体内部の化学反応、資源、燃料、核物質、新素材、廃棄物、危険物質、地球表層や地球内部の化学反応、電子機器、等々様々な物質・事象への理解が深まる。生活を豊かにする。安全に行動できる。不正確な情報に惑わされなくなる。
(生物・地学の基礎でもある。極めると物理につながる。)
物質の分類、元素の識別、原子、化学結合への導入
アンケート:身近にあるものから、知っている限りの物質を単体・化合物・混合物についてそれぞれ列挙してみる。
元素(単体)例:1円玉。(アルミニウム)
混合物 例:海水。(水、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、プランクトン、酸素、二酸化炭素、…)
化合物 例:塩化ナトリウム。(塩素、ナトリウム)
→どうやって、前者が()内に挙げた成分でできていることを証明するか?
加熱、蒸留、電気分解、凍結、密度、融点、顕微鏡、…。
どこまで成分を分けられるだろう。 →元素の認識へ/原子という単位
純物質と混合物で世の中の物質を分けた場合、本当の純物質は世の中に存在するか。また、実験などで純物質として試薬や試料を扱えるのはどういう場合か。(どのような仮定をおいているか)
今年1年で学ぶこと
物質にはどのような種類があるか。どんな挙動/反応をするか。それを支配するのはどのようなきまり(法則)なのか。それはどのように身の回りに存在し、どのように我々に影響を及ぼしているのか。
1997.4.11実施
物質の分類、元素の識別、原子、化学結合への導入(続き)
アンケート結果から(まとめ)
物質の成分をどうやって知るか
固有の性質を見いだす(融点、密度、電気伝導度、) 分解→化学反応などが利用できる
炎色反応、……。 知識の積み重ね。
化合物→複数の純物質に分解できる/複数の元素に分けられる
元素 →物質を作る基本単位。それ以上分けることができない。
1)元素には種類がある。 …どんな元素がある?
2)元素には固有の性質がある。 …どんな性質がある?
…どうやって見分けるか →分析方法 例:アルキメデスの原理、王冠の金に混ぜもの?…密度で判断。
科学(化学)の発達の歴史
化学と文明、産業の発達とのかかわり。青銅器時代、鉄器時代…農業生産性、戦争、…。
余談:元素特有の性質の利用…チタン(軽くて強く、磁気を持たない)で潜水艦。銅で電線。最近の高圧線はアルミの線を束ねている…軽い、伝導率良好、表面効果があるので表面積を大きくするため束ねる。
純物質と混合物
世の中すべて混合物?
純度とは/どのくらい純粋か 金の延べ板に純度の刻印、半導体材料に要求される純度
純粋な単体の性質をどうやって知るか? ex.鉄の融点の値はほんとかな??
解答群:世の中には本当に純粋な鉄がある。細かいことは気にしない。計算で求められるものだ。実は融点の数値なんてウソで信用してはいけない。 …どれだろう??
近似の意味。有効数字の意味。
原子 元素固有の性質をもった、最小の単位。それ以上分けることのできないもの
原子説(ドルトン) それまでに知られていた3法則を矛盾なく説明できるものとして提唱
質量保存の法則
定比例の法則
倍数比例の法則
原子説の内容:
1)
2)
3)
4)
1997.4.17実施
元素の認識
人間の利用…金属の種類
青銅器時代、鉄器時代 鉄の精錬には高温が必要。炉の技術が必要。銅と錫をどうやって手に入れたか?
鉄の利用:武具、鉄と馬による侵略、ヒッタイト。
農具・・・農業生産性の向上
余談:日本人の起源、渡来人による文化・技術輸入、調布や狛江、砧、高麗の地名の由来。たたら製鉄と日本刀。
気体の研究…ものが燃えるのはなぜ?→化学反応の概念
燃素(フロギストン)説 →酸素の発見
空気にはいろいろな成分がある。
原子 元素固有の性質をもった、最小の単位。それ以上分けることのできないもの
原子説(ドルトン) それまでに知られていた3法則を矛盾なく説明できるものとして提唱
質量保存の法則 化学変化の前後で質量不変
定比例の法則 化合物では成分元素の質量比が一定
倍数比例の法則 元素A、Bからなる化合物が複数存在するとき、Aの一定質量に対して化合しているBの質量を比較すると、各化合物で簡単な正数比になる。
原子説の内容:
1)物質を次々に分解していくと、ついにはそれ以上分割できない粒子になる:原子
2)各元素はそれぞれ固有の大きさ、質量、性質をもつ原子がある
3)化合物は、成分元素の原子が一定の割合で結合してできている
→定比例の法則、倍数比例の法則
4)化学変化は原子どうしの分離や新たな結合の生成によって起こる。このとき、原子は新たに生成も消滅もしない。
→質量保存の法則
1997.4.18実施
気体分子 −ドルトンの原子説の限界
塩素+水素→塩化水素の例
気体を作る元素単体は、ほとんどが2原子分子。例外:希ガス、オゾン
原子
原子の構成:原子核と電子
電子:負の電荷をもつ粒子。1.60×1019C(クーロン)=電気素量
原子核:正の電荷を持つ陽子と電気的に中性の中性子からなる。
大きさ 電荷
陽子
中性子
電子
原子核の陽子の個数(原子番号)=元素の性質を決める
原子核をつくる陽子と中性子の合計数(質量数) →いくつかの陽子と中性子の数の組み合わせがある場合、それぞれを同位体と呼ぶ。
安定な組み合わせ:安定同位体、 不安定な組み合わせ:放射壊変を起こす=放射性同位体
例:炭素 炭素12:陽子6、中性子6 ・・・質量数12 もっとも普通な炭素。
炭素13:陽子6、中性子7 ・・・質量数13 安定同位体
炭素14:陽子6、中性子8 ・・・質量数14 放射性同位体
大気上層での窒素の陽子1個→中性子による炭素14の生産と、放射壊変による消費のバランス。
(半減期約6000年)木片などによる炭素14法の年代測定の原理
1997.4.24実施
同位体の続き
陽子数・・・原子番号・・・原子の性質を決める
陽子+中性子数・・・質量数
同位体(核種)の表記
長寿命核種
実験
質量保存則
Na2SO4 + BaCl2 → BaSO4 + 2NaCl (天秤上、密閉した中で反応させる)
予想
反応の後で装置全体の質量は1)増加する2)減少する3)かわらない
挙手させる・・・結果は1)0人 2)15人 3)20人くらい。
実験で確かめる。ほぼ変わらないことを確認(天秤の精度の範囲で)
閉じた系(closed system)と開いた系(open system)の説明
・・・系の外部との物質のやりとり
質量保存則は閉じた系をつくらないと成立しない。
実験
ふたをしないで少量の石灰質の砂(与論島の海岸砂)に塩酸を加える
系全体の質量変化の予想:増える1減る15変わらない10